ファンキー、メロウ&ジャジー。
音楽とあらば節操なく何でも聴いてしまう Gutch15。レッド・ツェッペリン、イエスと1969年デビュー組を上げてきましたが、本日も同年にデビュー・アルバムを発表したクール&ザ・ギャングをアップします。
クール&ザ・ギャングは、ファンクというジャンルを切り拓いた、確かな演奏テクニックを持つヴォーカル&インストゥルメンタル・グループです。70年代は彼らに憧れたような後進ファンク・グループが目白押しでした。そして80年代に入ってイメージを一新、モダンなダンス・サウンドを取り入れて生まれ変わったのも印象的でしたね。
1969年発表のデビュー・アルバムは、バンド名をそのまま付したタイトルと言うべきか、A面1曲目にしてデビュー・シングルとなった曲をアルバム・タイトルにしたと言うべきか迷ってしまいますが、とにもかくにも『クール&ザ・ギャング』といいます。
アルバムにクレジットされたメンバーは全8名。リーダー格の Robert "Kool" Bell (b, vo) をはじめ、Khalis Bayyan こと Ronald Bell (sax, flute, vo), George "Funky" Brown (ds, perc, vo), Robert "Spike" Mickens (tp, flugelhorn, perc, vo), Ricky West (p, vo), Dennis "D.T." Thomas (sax, flute, perc, vo), Claydes Smith (g), Woody Sparrow (g) までホーン・セクションも含めた大所帯ですね。
プロデューサーはトランペット奏者の Gene Redd。彼は7曲でクール&ザ・ギャング、ジーン・レッドと共作者としてもクレジットされ、1曲は丸々自分だけで作っています。バンドにとって良き協力者であったことがうかがえます。このファーストでは全10曲中ヴォーカル・ナンバーは1曲のみで、全体的には楽器のアンサンブルでファンクを追究した内容になっています。
Track
01 Kool & The Gang (1969 - 全米59位)
02 Breeze & Soul
03 Chocolate Buttermilk
04 Sea Of Tranquility
05 Give It Up
06 Since I Lost My Baby
07 Kool's Back Again
08 The Gang's Back Again (1970 - 全米85位)
09 Raw Hamburger10 Let The Music Take Your Mind (1970 - 全米78位)
幕開けはファースト・シングルにしてバンド名タイトルにした「クール&ザ・ギャング」から。作者名もクール&ザ・ギャングとなっています。ファンキーなギターとチア(喝采)のイントロから始まる、ホーンが疾走するファンク・ナンバーです。こう言っては失礼かもしれませんが、けっこう洗練されているのが不思議です。泥臭くなりがちなところを、主役のホーンをパーカッションや軽いギターがバックアップすることによって防いでいるんですね~。ビルボード・ホット100では意外にもヒットして、最高59位を記録しました。
Tr-02 「ブリーズ&ソウル」は一転、メロウなナンバーです。60年代後半でここまで洗練されたグルーヴ感が出せるのは、ジャズの素養があったからなのでしょう。このサウンドは後の War などにも間違いなく影響を与えているでしょう。一押し!
Tr-03 「チョコレート・バターミルク」はちょっとスリリングな出だしから始まるアップ・ナンバー。サックスが主役で軽快なソロも聞かせています。この曲は後進ヒップ・ホップ・ミュージシャンから大いにリスペクトされていて、サンプリングのネタ元としてよく使われています。
Tr-04 「シー・オブ・トランクィリティ」はその名の通り静かなメロウ・バラード。スムーズ・グルーヴの原型とでも呼びたいですね。2分半過ぎからビートが変わるのが新鮮で、右チャンネルのヴァイブラフォンがとても心地よい音を奏でています。D'Angelo が「Send It On」で大胆に使っていたのが印象的でした。
Tr-05 「ギヴ・イット・アップ」は芝居がかったブレイクからアップテンポのイントロに入るファンク・ナンバー。左チャンネルでバシバシ鳴っているドラムスが特徴で、ここを切り取ってサンプリングしている曲もあるほどです。全体に緊張感の高いアレンジで、R&B系のミュージシャンだけでなく、ロック系、あるいは映画音楽にまで影響を与えていそうな作品です。
Tr-06 「シンス・アイ・ロスト・マイ・ベイビー」は唯一のカヴァー曲。オリジナルは、Warren Moore と Smokey Robinson が作って The Temptations が65年に全米17位までヒットさせたモータウン・ソウルですね。トランペットがまるで歌うようにメロディを奏でます。
Tr-07 「クールズ・バック・アゲイン」と Tr-08 「ザ・ギャングズ・バック・アゲイン」は双子のような曲で、カップリングでシングル・カットされました。全米では「ザ・ギャングズ・バック・アゲイン」の方がA面で、ビルボード・ホット100で最高第85位。
両方ともファンキーなパートにジャジーなパートが組み込まれていて、フュージョンの原型だと言えそうです。“ダーダダ・ダーダ・ダーダダーダ” という符割りが登場するのですが、これってライヴで演っていたらすごく盛り上がるでしょうね!
Tr-09 「ロー・ハンバーガー」という生々しくも美味しそうな曲は、ジーン・レッドが単独で作った曲。無機質なギターのリフにホーンが呼応するような作りで、ジャズの手法に近いのかな。途中でサックスが “メリーさんの羊” みたいなメロディを演奏するのがユーモラス。
ラストを飾る「レット・ザ・ミュージック・テイク・ユア・マインド」は唯一のヴォーカル・ナンバー。アップ・テンポのファンクになっていて、ロバート・“クール”・ベルのベースが、リフも含めて大活躍です。右チャンネルに配されたヴォーカルにはさほど力強さはありませんが、みんなで口々に歌っているような楽しさがあります。ギターもホーンも縦横無尽に走り回っていて、極上のパーティ・ファンクとして完成されています。この曲はサード・シングルとしてカットされ、全米78位まで上がりました。
以上10曲でも33分弱と収録時間は短いです。意外なことに3曲もシングル・ヒットが出ているのですが、これまた意外なことにアルバム・チャートには入りませんでした。
8コメント
2019.09.12 22:53
2019.09.12 22:51
2019.09.12 22:50