#0042『Step By Step』 Steps

　ニューヨークのスゴ腕ミュージシャンたち。でも日本発。

　先日、ジェニファー・ロペスの記事でも書いた通り、私は実に節操なく様々なジャンルの音楽を聴くのです。その中にはもちろんジャズやフュージョンも入っています。

　「ピアノが好き」な私ですが、ヴァイブラフォンのクールな響きもかなり好きなんです。中でもお気に入りのジャズ系ヴァイブラフォン・プレイヤーが Mike Mainieri で、今朝は彼が1979年に結成したフュージョン・バンド、ステップスのデビュー・アルバムの登場となります。

　ステップスのメンバーは以下の通り。

• Mike Mainieri (vib)
• Michael Brecker (sax)
• Steve Gadd (ds)
• Eddie Gomez (b)
• Don Grolnick (p)

　ジャズからポップまでクロスオーヴァーな活躍を見せる豪華なミュージシャンたちが集ったものですね！

Tr-01　Uncle Bob
　 02　Kyoto
　 03　Belle
　 04　Bullet Train
　 05　Six Persimmons

　Tr-01 「アンクル・ボブ」はマイケル・ブレッカーのサックスが主役の曲。アップ・テンポの４ビートで、ジャズらしいスタイルですね。一切の妥協がない真剣勝負でレコーディングした様子が伝わってきます。すべてアクースティックの５人編成。一つひとつの「音」に注目して聴いていくと、スティーヴ・ガッドのドラミングが本当に繊細だし、エディ・ゴメスのベースの弾み方もとても素晴らしい。

　途中でドン・グロルニックのソロが入るところなどは、ピアノ好きの私は背筋ゾクゾクだし、瞬時に入れ替わってマイク・マイニエリのソロになるところも鳥肌もの。やっぱり、マイク・マイニエリは素晴らしい♪

　いやぁ、このバンドはかなり私の感性に合います。

　Tr-02 「キョウト」はもちろん「京都」のことですよね。このアルバムのレコーディングの直前に彼らは来日しており、その時のインスピレーションだろうと思われます。

　前曲とはうってかわってスローなビートの曲。基本となる美しいメロディはやはりマイケル・ブレッカーによって演奏されます。「地名ミュージック」でコンピを作るならオープニングにこれを選曲したくなります。

　ここではすぐに主役がマイク・マイニエリになります。ビートがゆっくりな分、かなり自由度の高いソロ演奏を聴かせてくれます。サックスとの絡みも有機的で、まるで２本の糸で織物を作っているようですよ。

　Tr-03 「ベル」はリリカルなナンバー。ビートはやや変則的なスロー。基本メロはマイケル・ブレッカーが担当するのがこのバンドのスタイルのようです。ここではピアノとヴァイブラフォンの掛け合いが聴きもの。フリーな感じの演奏ですが、よく聴くと緻密ですよね。

　そう言えば、マイケル・ブレッカーとドン・グロルニックはもう亡くなっているんですよね････。

　Tr-04 「ブレット・トレイン」はマイク・マイニエリのソロ・アルバム『Wanderlust』でも演奏していた曲。これは気分爽快な快速フュージョン。こういう曲が入っているとグッとアルバムに惹きつけられるし、全体が引き締まる心地がします。細かく刻んだドラムスにピアノのリフ、主役はヴァイブラフォンなんですが、もう「魔法のマレット」としか言いようがないハイテクぶり。ヴァイブラフォンの音だけを追いかけて聴いてみてください。すごさが身にしみますから！

　マイケル・ブレッカーはコーラス間のつなぎと後半のソロで大活躍。「弾丸列車」が警笛を大音響で鳴らしている様が目に浮かびます。

　ラストを飾る「シックス・パーシモンズ」は日本発のバンドらしい曲名です。ニューヨークに柿の木が生えているとは思えませんから、来日時にどこかで柿の実を見たんでしょうね。

　ちょっとスウィング感のあるジャジーなビート。全ての楽器が気だるげな空気を演出しています。途中でビート・フリーになって5人が呼吸を合わせながら音を産み出しているのが素晴らしいんです。そしてそのまま曲が終わっていく。

　この終わり方のおかげでものすごく余韻が残って、聴き終えたあとはしばらく立ち上がれない感じになります。この感覚、なかなか上手くお伝えできないので、実際に聴いていただければと思います。

　そうそう、レコーディングは日本の Steps Studio で行われました🎵

　なお、同時期に同名のロック・バンドがいたため、のちにバンド名は「Steps Ahead」に変更されました。