数ある楽器の中でもピアノがかなり好きです。
朝晩にはすっかり涼しくなってきて、だいぶ秋めいてきましたね。こんな時季には、ジョージ・ウィンストンの『オータム』を聴きたくなるというものです(^^)
『オータム』は彼が Windham Hill / Dancing Cat レーベルから出した初のアルバムになります。彼のソロ・ピアノによるレコーディングは1980年6月、リリース時期は同年11月でしたが、認知されるまではたいそうな時間がかかり、ビルボードのアルバム・チャートで最高139位を記録したのは85年に入ってからでした。
80年代の前半は「ニューエイジ・ミュージック」というジャンルが脚光を浴び始めていました。ポップなヒット曲群とは一線を画し、ジャズやフュージョンよりもずっと癒し要素が強いその音楽は、日本でも「環境音楽」などと呼ばれて大いに話題になっていました。このジャンルはその後「癒し系/ヒーリング」と発展し、一大ブームを生むことになります。
ジョージ・ウィンストンが所属していたウィンダムヒル・レーベルはその先駆けで、レーベル主は William Ackerman。彼はこのアルバムのプロデュースも担当しています。日本ではアルファ・レコードからの発売となり、その第1弾のラインナップの中の第1号、レコード番号 WHP-28001 が付されたのが『オータム』だったわけです。
まずはジャケット写真に心を奪われます。秋のトウモロコシ畑・・・・、どこまでも深~い空。そして裏面の樹の存在感・・・・。なんと残念なことに、CDではこの裏面の写真が見られないのです(x_x)
『オータム』はA面を9月、B面を10月と分けた構成になっていて、彼が生まれ育ったモンタナの秋の自然模様をイメージした曲が、清冽なピアノ・ソロで表現されています。
Side-A
1 Colors / Dance
2 Woods/森3 Longing / Love/あこがれ / 愛
Side-B
1 Road/道
2 Moon/月
3 Sea/海
4 Stars/星
A面9月のトップを飾る「Colors / Dance」は早くも最初のハイライト曲。ニューエイジに不慣れな方にもすんなりと聴いていただける曲ではないでしょうか。透明感あふれる第一部は3分後に情熱的に展開し、そのままの勢いでラストまで突っ走ります。10分を超える長い曲ですが、その詩的な世界に浸っていると時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。
A-2 「Woods/森」は序盤の高音を活かしたパートが印象的。全体的にクラシック・ピアノのようなアルペジオが生きていて、ゆっくりと空中浮揚して天に舞い上がるようなイメージがあります。
A-3 「Longing / Love/あこがれ / 愛」は中盤のハイライト。豊かな情緒を感じさせるイントロが1分20秒ほど続いた後で切ないメロディに入ります。私はこのマイナー・トーンのメロディに心を洗われる気がします。これは私だけではなく日本人の好きなメロディじゃないかな? この曲は日本のCMで使われていたので、「ああ、これか!」となる人も多いと思います。
レコードをひっくり返すと10月のB面です。1曲目は「Road/道」。ゆったりとした単調な繰り返しがどこまでも続く道を表現しています。音の上がり下がりによって「坂」も表現されているような感じがします。途中で調が変わると 「あ、道がカーブしているのかな」と思ったり。
B-2 「Moon/月」は終盤のハイライトで、日本の楽器、「琴」の音色を意識して作った曲だそうです。1分のイントロを経てAメロに入ると、またまた心を惹きつけるマイナー・トーン。そしてイントロのテーマにまた戻って来てからBメロへ。う~ん魅力的だ。6分15秒から先の部分が完全に琴を弾いているような細かい譜割り。この演奏がすごいと思うとともに、ことという楽器を持つ日本を誇りに思う瞬間です。
B-3 「Sea/海」は寄せては返す波を速めのタッチで演奏した小品。変奏曲のような作りで、繰り返すうちに徐々にテクニックを見せつけてきます。短い曲ですが、メロディやムードには哀しみが満ちているような気がします。
ラストを締める「Stars/星」は、広い夜空を表す基本構造の中に、流星を思わせる高音が入ったりして変化をつけている曲。終盤で空が揺れているような表現が出てきて曲が終わるのですが、最後のピアノの音が完全に消えるまでの長い余韻も楽しんでください。
4コメント
2019.10.08 22:54
2019.10.08 17:00
2019.10.08 05:17