#0065『Chelsea Girl』 Nico


 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドジャクソン・ブラウン

 「ニコ」こと Christa Päffgen はドイツ人マルティ・アーティスト。歌って書いて演技して演奏してと多才な姿を見せましたが、その生い立ちなどは謎に包まれているようです。

 その活躍はファッション・モデル業から始まったようです。さあ、これからという時にアメリカ空軍の中のケダモノに襲われ、その身を汚されてしまうという衝撃的な体験をします。

 境遇と才能の両方によるのでしょうが、彼女は語学の才能を発揮します。数ヶ国語を操ったそうですよ。もちろんこのアルバムで歌っている英語もお手のものですよね。

 ニコは1965年から音楽活動を始めていますが、何と言っても彼女の名を音楽ファンに知らしめたのは『The Velvet Underground & Nico』(1967) でしょう。「バナナを剥いてごらん」のジャケットでお馴染みのアレです!

 『チェルシー・ガール』はその後に出されたソロ名義としてのファースト・アルバムで、ヴェルヴェッツの面々が作った曲以外に、まだ10代の若者だった Jackson Browne の曲を3曲も取り上げているのが目を引きます。


Tr-01 The Fairest Of The Seasons/美しい季節
  02 These Days
  03 Little Sister

  04 Winter Song/冬の歌

  05 It Was A Pleasure Then

  06 Chelsea Girls

  07 I'll Keep It With Mine

  08 Somewhere There's A Feather

  09 Wrap Your Troubles In Dreams

  10 Eulogy To Lenny Bruce


 アルバムの幕開けはジャクソン・ブラウンの曲「美しい季節」から。ニコの物憂いヴォーカルの後ろにはアクースティック・ギターがいて、そのギターをストリングス・セクションが支えています。素朴で美しい曲だと思います。

 Tr-02「ディーズ・デイズ」もジャクソン・ブラウンの曲。もの悲しい歌詞を歌うニコの冷静な声が印象的です。アクースティック・ギターはジャクソン・ブラウンが弾いているそうで、この曲でもバックではストリングス・セクションが優雅な演奏を聞かせてくれます。のちにジャクソン・ブラウンはセルフ・カヴァーをレコーディングしました。

 Tr-03「リトル・シスター」はヴェルヴェッツ・チームの作品。Lou Reed のエレクトリック・ギターと John Cale のオルガン、ヴィオラが曲に落ち着きを与えています。ここまではいずれも淡々としたリズムの曲ですね。

 Tr-04「冬の歌」で少しテンポが変わります。ジョン・ケールが作ったこの曲は、フォークの香りが漂いながらも小走りでどこかへ急いでいるようなテンポになっています。フルートやストリングスがヴォーカルを追いかける展開は私のお気に入りです。

 Tr-05「イット・ワズ・ア・プレジャー・ゼン」はニコ、ルー・リード、ジョン・ケール の3人で作ったサイケな大作。演奏は8分に及んでいます。ジャズのインプロヴィゼーションを歌詞付きのヴォーカルで演っているようなスタイルで、4曲目までとは大きく趣が異なります。わざと歪ませたノイズを使うなどかなり実験的な側面も持っています。

 Tr-06「チェルシー・ガールズ」も7分を超える大作です。ルー・リードと Sterling Morrison によるこのナンバーは、アルバムの流れを再びストリングス・フォークに戻す役割を持っているようです。つぶやくようなヴォーカルの持つシンプルさが逆にこの曲に力を与えて入るような気がします。

 Tr-07「アイル・キープ・イット・ウィズ・マイン」Bob Dylan の曲。『ブロンド・オン・ブロンド』のレコーディングの時にボツになった曲をニコが拾った形になります。アクースティック・ギターはふたたびジャクソン・ブラウンの演奏です。

 Tr-08「サムウェア・ゼアズ・ア・フェザー」はジャクソン・ブラウン作のちょっと明るいムードのナンバーで、ニコはアルバム中で一番声を張って歌っているように聞こえます。短いですがとても素敵な曲です。

 Tr-09「ラップ・ユア・トラブルズ・イン・ドリームズ」はルー・リードの作品。かなりプリミティヴなリズムパターンと異国風のギターのリフに乗って、ストリングスとフルートが合いの手に入ります。ニコがいたってクールに歌いこなしているのが伝わってきます。

 Tr-10「ユーロジー・トゥ・レニー・ブルース」はフォーク・シンガー Tim Hardin の曲。アルバム最後になるこの曲まで、ニコはアンニュイなヴォーカル・スタイルで徹底しています。これが彼女の持っているぶれない軸なんですよね。





 ニコ自身は決してこの作品に満足していなかったそうで、彼女はもっとロック・サウンドを強調したアルバムにしたかったようです。彼女はドラムスを入れて、ギターもパワーアップさせたかったのですが、そうした願いは却下されました。ストリングスとフルートが加わった演奏が完成版として示されたときには、ニコは大いに嘆き悲しんだそうですよ。


 でも私はこのアルバムがけっこう好きです。ストリングスとフルートのユニークな世界にこの身を投じ、思い切り埋没するのはかなりの快感であります。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2020.02.04 13:04

    @気ままにやっぱりヴェルヴェッツとの共演は影響大でしたね。かく言う私も彼女が特別な力を持った存在に思えて仕方ありません!
  • 気ままに

    2020.02.04 10:33

    ニコは一部のPunk、Newwaveから神格化された存在でしたね。 これを下手!と言いきる人間は本質的に音楽を分かってないと言いきりますってワイも知らんから収穫対象にしよう!!

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

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