1980年代のオッサレ~・サウンドの代表格。
今朝は80年代オッサレ~系ポップ・グループでは最高の部類に入るであろうスウィング・アウト・シスターの『ベター・トゥ・トラヴェル』を聴いています。このアルバムは彼らが87年にリリースしたデビュー・アルバムになります。
スウィング・アウト・シスターは、キーボーディストの Andy Connell と打楽器奏者の Martin Jackson の2人が結成し、のちにヴォーカリストの Corrine Drewery が加入してトリオ編成となってからデビューしました。
Paul Stavery O'Duffy のプロデュースのもと作られた『ベター・トゥ・トラヴェル』のサウンドはとにかく洗練されていますよね。令和になった今の時代に聴いても「オッサレ~でソフィスティケイトされた感」がハンパないのです。
シンセサイザーを多用している割りに無機質な感じがしないのは、メロディアス&ハーモニアスに徹した音作りをしていることと、生のパーカッションやホーン・セクションなどを入れたアレンジが秀逸だからでしょう。
曲によってはジャジーな要素が入ったり、ファンキーだったり、ロックっぽいギターの使い方をしてみたり。工夫がいっぱいでゴージャスで、聴き込んで良し、BGMに良し🎵
イギリスでは5枚ものシングルが切られたのですが、アルバム中のどの曲もたいへん親しみやすいものばかりで、そのシングルの多さにも十分に納得できますね。
Side-A
1 Breakout (1987 - 全米6位、1986 - 全英4位)
2 Twilight World (Superb Superb Mix) (1988 - 全米31位、1987 - 全英32位)
3 After Hours
4 Blue Mood
Side-B
1 Surrender (1987 - 全英7位)
2 Fooled By A Smile (1987 - 全英43位)
3 Communion
4 It's Not Enough
5 Theme (From "It's Better To Travel")/テーマ(ベター・トゥ・トラヴェル)
CD Bonus Tracks
1 Breakout (N.A.D. Mix)
2 Surrender (Stuff Gun Mix)
3 Twilight World (Gas Distress Mix)
4 Communion (Instrumental)
オープニングを飾る「ブレイクアウト」は間違いなく彼らのシグニチャー・ソングと言えるでしょう。打ち込みのベースラインにシンセサイザーという典型的なニューウェイヴの道具立てですが、この曲のクォリティを他の凡庸な曲から際立たせているのは、ヴォーカルのコリーンの魅力的な声と、輝くホーン・セクションでありましょう。
イギリスで86年に事実上のデビュー・ヒットとなった「ブレイクアウト」は、その後全米でも人気が出て翌87年にビルボード・ホット100で6位まで上昇。アダルト・コンテンポラリーでは見事にNO.1になっています。
私が彼らのベスト盤を選曲するとしたらオープニングはこれで決定ですね🎵
A-2「トワイライト・ワールド」の冒頭で聞こえてくるのは「・・・・お忘れ物の無いようにお乗り換えください。終点東京です・・・・」というアナウンス。ちょっとビックリですね。コリーンはバンドに参加する前は、ファッション・モデルやデザイナーの仕事をしており、日本に来たこともあったそうです。きっと日本が好きなんだな、と信じたい。
この曲は英米でシングル・カットされ、それぞれトップ40入りしています。弾けるようなポップ・ソング「ブレイクアウト」と比べて、「トワイライト・ワールド」はちょっと重い雰囲気。これら2曲はそれぞれ【陽と陰】を体現していますね。
そしてホーン・セクションの使い方もよりジャジーになっており、そこに絡み合うストリングス・セクションも素敵な夜を演出してくれそう!
個人的にはミュートの効いたトランペットの音に強く惹かれます。
A-3 「アフター・アワーズ」は Steve Winwood みたいなオルガンの音から入るバラード。コリーンのヴォーカルを前に出し、バックを控え目にすることで孤独感が表現されている気がします。この曲でも2コーラス目が終わった後の間奏部で日本語らしいアナウンスが流れています。よく聴き取れないのが残念ですが・・・・。
終盤で曲調が変化して4ビートのブレイクになる部分がジャジーで素敵です。そしてそのままの雰囲気でフェイドアウトしていくのがとてもイイ🎵
A-4 「ブルー・ムード」は85年リリースのデビュー・シングルです。でも本国イギリスでもまったく売れずチャート・インもしていないのであまり知られていないでしょうね。
この曲に関してはビートに重点を置いてます。軽快なパーカッションの音にリードされている感じが強いですね。アシッド・ジャズにはこういうサウンドも多かったんですが、85年当時のスウィング・アウト・シスターはまだ路線が固まっていなかった模様。
アルバムをひっくり返すと、イギリスでは「ブレイクアウト」の次にシングルになったナンバー「サレンダー」が流れ始めます。
UKチャートでは最高7位を記録したこの曲はとてもソウルフルなナンバーで、ミドル・テンポのシンコペーションのリズムが印象的。鮮明な音色のトランペット・ソロは John Thirkell の演奏です。
コリーンのヴォーカルの低音域を敢えて使っているので陰鬱な感じが漂います。PVでは朽ち果てて廃墟になったクラブで演奏してましたね。
B-2 「フールド・バイ・ア・スマイル」で明るいポップ路線に戻ります。イギリスで第5弾シングルになり87年の夏に最高43位を記録。やっぱりこのノリが一番親しまれるのかな、と納得。南カリフォルニアでレジャーを楽しんでいるPVも明るい雰囲気でしたね!
B-3 「コミュニオン」はシロフォンの音が印象的なちょっぴり暗い影を感じる曲。タイトルは「霊的交渉」とか「信仰仲間」とかいう意味だそうです。サビの部分の「人生が罪深いものになるとき、私たちの解決の時がやって来る、それがコミュニオン」という歌詞が意味深ですね。
B-4 「イッツ・ノット・イナフ」はビートは速いですがサウンドもメロディも重々しい雰囲気のナンバー。この曲で印象に残るのは間奏部で聞こえてくるロックっぽいギター・ソロ。後半へ行くにしたがってテンションが上がっていくのが聴きどころ。
ラストを締めるのは唯一のインスト曲「テーマ(ベター・トゥ・トラヴェル)」。強い2つのビートが中心に組み立てられていて、チェンバロや琴の音のように聞こえるのはシンセサイザーでしょうか。
モノクロまたはセピア色の映像が頭に浮かぶサウンドは実はこのアルバムの重要な一側面になっていますね。
さて、後発のCDにはボーナス・トラックが4曲収録されています。それぞれアルバム収録曲の別ミックスになりますが、「ブレイクアウト」、「サレンダー」、「トワイライト・ワールド」の12”ヴァージョンはうれしいオマケですね🎵
全9曲は大きく2つの性質に分けることができると思います。洗練されたオシャレ系ポップすなわち【陽】と、洗練されてはいるけれども陰鬱なアダルト系ナンバーすなわち【陰】です。
それぞれの曲がどちらに属するか考えながら聴くのも、また一興かもしれませんね。
このアルバムの後、マーティン・ジャクソンが脱退してしまい、スウィング・アウト・シスターはアンディ・コーネルとコリーン・ドリュリーのデュオ編成になります。
6コメント
2019.12.28 10:47
2019.12.28 08:38
2019.12.27 02:05