ついにトップ10ヒットを出して大ブレイクを果たした、みんなに愛されたアルバム。
新ウェブサイト立ち上げ第2弾の音楽記事もアラン・パーソンズ・プロジェクトにしましょう。
70年代に一時的なプロジェクトとしてアルバム『Tales Of Mystery And Imagination - Edgar Allan Poe/怪奇と幻想の物語 ~エドガー・アラン・ポーの世界~』を制作して、シングルもトップ40入りさせて一応の成功を収めた彼らは、その後も活動を継続し70年代後半にはトップ30入りするシングル・ヒットを出し、好調に80年代を迎えました。
80年代に入ると、私が彼らの最高傑作であると考える『運命の切り札』をリリースし、トップ20入りするシングルを2曲も出して、アルバムのロング・セラーとなり、いよいよ勢いがついてきました。日本での人気も徐々に上がって来ていたと思います。
そんなタイミングで登場したのが6枚目のアルバムになる 『アイ・イン・ザ・スカイ』 でした。リスナーの期待が高まる中、プレッシャーを押し返し、と言うかプレッシャーなどまったく感じさせない完成度を誇る作品がリリースされたことには驚きました。そしてこのアルバムからは、ついに全米トップ10入りする大ヒット・シングルまで生まれてしまったのです!
アラン・パーソンズ・プロジェクトというと、The Beatles や Pink Floyd のエンジニア、Pilot や Al Stewart のプロデューサーとして着実に活躍していた Alan Parsons と、ソングライティング力が高く、ツボを押さえた曲を提供してくれる Eric Woolfson の2人を中心に、オーケストラやコーラスのアレンジを担当する Andrew Powell が加わったトロイカ体制で作品を制作していました。3人のバランスが最もよくとれていた時期に作られたのが 『アイ・イン・ザ・スカイ』 だったと思います。
バンドのメンバーは、アラン・パーソンズ (key)、エリック・ウルフソン (key)、Ian Bairnson (g)、Stuart Elliott (ds, perc)、David Paton (b) の5人が中心。一方、固定されたヴォーカリストはおらず、曲ごとに6人がリード・ヴォーカルを担当しています。
Side-A
1 Sirius/狼星(シリウス)
2 Eye In The Sky (1981 - 全米3位)
3 Children Of The Moon
4 Gemini/双子宮(ジェミニ)
5 Silence And I/静寂と私
Side-B
1 You're Gonna Get Your Fingers Burned/火傷
2 Psychobabble (1982 - 全米57位)
3 Mamma Gamma4 Step By Step
5 Old And Wise
幕開けは彼らお得意のインスト・ナンバー 「狼星(シリウス)」 から。A-2 「アイ・イン・ザ・スカイ」 の序曲で、そのまま曲はつながっていきます。短い曲ですが、この神秘的な出だしと力強いギターの音が気に入られたのか、スポーツ関係で選曲されました。
シカゴ・ブルズの登場テーマ曲に使われたり、千葉マリンスタジアムで “初芝のテーマ” に使われたり(懐かし!)、東京ドーム時代の日本ハムの選手紹介のBGMになったりしましたね。
そして曲はそのまま 「アイ・イン・ザ・スカイ」 のイントロへ。ビルボード・ホット100で最高第3位を記録した彼らにとって最大のヒット曲ですが、どちらかと言うと地味な曲という印象だったので、このシングル・ヒットには驚かされました。深みのある歌詞とじっくり聴けるメロディが良かったのでしょう。エリック・ウルフソンのヴォーカルも優しくて◎。
A-3 「チルドレン・オブ・ザ・ムーン」 は前作の 「神の使者」 を思わせるイントロから入る曲。マイナー・コードとメジャー・コードを交差させつつ展開していくのが上手いですね。リード・ヴォーカルは パイロット のデヴィッド・ペイトン。上記の通り、ベースも担当しています。この曲はビートとビートの間がスカスカな感じがしますが、多彩な楽器やコーラルを使ったアレンジでカヴァーしています。
A-4 「双子宮(ジェミニ)」 はインタルード的な小品。美しいリード・ヴォーカルは前作でもおなじみ Chris Rainbow。バックはシンセサイザーのみで、あとはクリスの声の多重コーラスというシンプルながら丁寧に作り込まれた構成です。
A-5 「静寂と私」 はA面のハイライトとなる作品。リード・ヴォーカルはエリック・ウルフソンで、美味しいところを持っていきます。ピアノのイントロから入るバラードの前半。次第に盛り上がっていくものの “これで7分以上いくのか? キツイんじゃない?” と思ってしまう。ところが2分40秒過ぎにおっとビックリ、テンポが変わりオーケストラを全面に加えたインストに早変わり! 4分20秒過ぎまであっという間に到達です。アンドリュー・パウエルがとてもいい仕事をしていて、この間が単なるイージー・リスニングになっていないのが素晴らしい。オーケストラを使いながらもきちんとロックになっているんです。アルバム中で最もプログレ色が強いのが 「静寂と私」 でしょう。
そして曲はバラードに戻るのですが、後半の盛り上がりの素晴らしさは前半の比ではありません。この曲は日本でもたいへん話題になり、テレビのCMでも使われて、シングル・カットもされました。
レコードをB面にひっくり返すとロック色の強いイントロが流れ始めます。「火傷」 はウェスト・コーストを思わせるカラリとしたロック・ナンバー。リード・ヴォーカルはこれもおなじみの Lenny Zakatek。前作からのシングル 「ゲームズ・ピープル・プレイ」 もそうでしたが、この人が歌う曲はヒット・ポテンシャルが高いですね。間奏部の彼の弾け方なんか最高でしょう? 架空ディレクター Gutch 的 “たられば” で言えば、これは是非ともシングル・カットすべきである!(笑)
実際、カナダではシングル・カットされていました。
B-2 「サイコバブル」 はなぜかセカンド・シングルに選ばれてしまった曲。私としては、これのシングル化はNG! ちょっと気味の悪いキーボードのリフから入り、リード・ヴォーカルの Elmer Gantry の声がとても印象的ですが、決してシングル向きのメロディではないと思うんですよね。
案の定、ビルボード・ホット100では最高57位で終わってしまいました。何やってんだ!
B-3 「ママ・ガンマ」 は実にアラン・パーソンズ・プロジェクトらしいインスト曲。ミドル・テンポのナンバーで、コンピュータ・プログラミングを多用したテクノ・サウンドです。プログレからテクノまでやれるのが彼らの凄いところです(^^)
なんでもオランダの空中飛行チームがショウのテーマ曲として使用したとか。のちに焼き直しヴァージョンも出ましたね。
B-4 「ステップ・バイ・ステップ」 はアダルト・コンテンポラリーでヒットしそうな曲。元のメロディが強いうえにアレンジも強い曲で、あえて不協和音のギターのリフをかぶせたり、イアン・ベアンソンの凝りまくったギター・ソロが聞けたりします。リード・ヴォーカルは再度レニー・サカテック。やはりこの人が歌うと雰囲気が引き締まって、ヒット・ポテンシャルが高くなります。私としてはシングル候補の1曲に挙げたい。
ラストを締めるのはスケールの大きなバラード 「オールド・アンド・ワイズ」。リード・ヴォーカルの Colin Blunstone は多分アラン・パーソンズ・プロジェクトには初登場でしょう。誰? と思った方、The Zombies のヴォーカリストといえば話が早いかな。この人のソロ・アルバムも持っておりますが、なかなかの出来映えです。
アラン・パーソンズ・プロジェクトのアルバムは、最後にこの手のバラードを持ってくることが多いのですが、毎回毎回感動させられちゃうですよねぇ。この曲もヴォーカルとピアノの掛け合いが素晴らしく、
♪ As Far As My Eyes Can See のあとのタララ、タララ (← 伝わるかしら) というピアノのフレーズ、そしてサビの後に再びこのパートに戻ってくるところなど、涙なしには聴くことができません。さらにこの曲にはゲストとして Mel Collins が参加して、素晴らし過ぎる泣きのサックスを演奏してくれているのも聴きどころですよ!
1983年にはビルボードのアダルト・コンテンポラリーのチャートに入り、最高21位を記録しました。もちろん架空ディレクター Gutch15 的には2枚目か3枚目のシングルにしますとも!
2017年リリースの 『35周年記念エディション』 ではリマスター&エクステンディド・ヴァージョンのCDになっていて、デモ・ヴァージョンや未発表曲がボーナス・トラックとして収録されていました。
CD Bonus Tracks
1 Sirius (demo)/狼星(シリウス)
2 Old And Wise (Eric Woolfson vocal)
3 Any Other Day (studio demo)
4 Silence And I (Eric Woolfson vocal)/静寂と私
5 The Naked Eye
6 Eye Pieces (Classical Naked Eye)
また、ディスク2、3としてさらに別ヴァージョンや未発表ヴァージョン、アルバム未収録だったシングル・ヴァージョンなどが収録されていて、ファンとしては “買ってよかった♪” のセットとなっています。
前作 『運命の切り札』 がビルボードのアルバム・チャートに58週間も入り続けたロング・セラーとなったのに対し、『アイ・イン・ザ・スカイ』 は41週間でチャートから去って行ってしまいました。おそらくはセカンド・シングルの選曲ミスであり、もっとヒット・ポテンシャルの高い曲にしておけば、アルバムもさらにブレイクしたであろうと思っています。
10コメント
2019.09.04 21:17
2019.09.04 17:05
2019.09.04 12:58