#0001『The Turn Of A Friendly Card/運命の切り札』 The Alan Parsons Project


無人島に5枚持っていくなら必ず入るアルバム。

 アメーバオウンドに引っ越してきました。

 まずはお試しということで、“マイ・ロック・カタログ” NO.1のアラン・パーソンズ・プロジェクトをアップします。『運命の切り札』は、私にとって、彼らの最高傑作でありまして、LPを買い、CDを買い、そしてリマスターCDまで買ってしまった愛着のあるアルバムなのです。

 アラン・パーソンズはロンドン出身のミュージシャン、エンジニア、プロデューサーです。当初は裏方でものすごく良い仕事をしていて、The Beatles 『Abbey Road』 のエンジニア、Pink Foyd 『Dark Side Of The Moon』 のエンジニア、Al Stewart 『Modern Times』、『Year Of The Cat』、『Time Passages』 のプロデューサーなどなど、これらだけを見ても、彼の敏腕ぶりがお分かりいただけますよね~♪

 70年代後半に入ると自らの名前を冠せた “プロジェクト” に取りかかり、76年の『Tales Of Mystery And Imagination - Edgar Allan Poe/怪奇と幻想の物語 ~ エドガー・アラン・ポーの世界』を筆頭に毎年1枚ずつアルバムを制作しました。そして第5作に当たるのがこの『運命の切り札』ということになります。

 コンセプチュアルな作品を3枚リリースした後、“ポップ・ファンタジア” に転じた『Eve/イヴの肖像』を出して、この先どうなるのだろう?? と思わせつつ80年代を迎えた中、デケイド最初に登場した『運命の切り札』は、原点回帰を思わせる壮大なコンセプト・アルバムとなりました。

 曲作りはすべてアラン・パーソンズと相棒の Eric Woolfson で、この2人がプロジェクトの核なのですが、もう1人欠かせない存在なのがオーケストラ・アレンジの Andrew Powell です。アラン・パーソンズ・プロジェクトはプログレッシヴ・ロックだと思っているのですが、その要素として大きいのがアンドリュー・パウエルなんですよね~。

 時にハードに、時にアダルトに、時にクラシカルにぐいぐいと迫ってくる『運命の切り札』。そのクォリティの高さゆえロング・セラーとなり、全米アルバム・チャートでは1年以上チャート・インしていました。80年のリリースでしたが、ビルボード200での最高位は81年に入ってからの13位。そして見事に★ミリオン・セラーに輝きました!


Side-A
  1 May Be A Price To Pay/プライス・トゥ・ペイ
  2 Games People Play (1981 - 全米16位)
  3 Time/時は川の流れに (1981 - 全米15位)
  4 I Don't Wanna Go Home
Side-B
  1 The Gold Bug/黄金のかぶと虫
  2 The Turn Of A Friendly Card (Part 1)/運命の切り札(パート1)
  3 Snake Eyes/神の使者 (1981 - 全米67位)
  4 The Ace Of Swords/堅牢の御剣
  5 Nothing Left To Lose/失われゆく神々の国
  6 The Turn Of A Friendly Card (Part 2)/運命の切り札(パート2)
CD Bonus Tracks
  1 May Be A Price To Pay (Intro Demo)/プライス・トゥ・ペイ

  2 Nothing Left To Lose (Basic Backing Track)/失われゆく神々の国

  3 Nothing Left To Lose (Chris Rainbow Vocal Overdub Compilation)/失われゆく神々の国

  4 Nothing Left To Lose (Early Studio Version with Eric's Guide Vocal)/失われゆく神々の国

  5 Time (Early Studio Attempt)/時は川の流れに

  6 Games People Play (Rough Mix)

  7 The Gold Bug (Demo)/黄金のかぶと虫


 オープニングは、勇ましいホーン・セクションのファンファーレから入る「プライス・トゥ・ペイ」です。ファンファーレの後がイントロということになりますが、このパートのキーボード・アンサンブルは厚みがあって、なおかつスペイシーな感じも漂います。タイトで重々しいビートに転じると Elmer Gantry のヴォーカルをフィーチュアしたAメロになります。曲ごとに様々なヴォーカリストをフィーチュアするのがこのプロジェクトの特徴ですね。エルマー・ガントリーは60年代に Elmer Gantry's Velvet Opera なるロック・バンドで活躍していたヴォーカリストで、本名は Dave Terry。なかなか野太いパワフルな声の持ち主です。オーケストラやキーボードによって彩られた厚みのあるドラマティックなサウンドは、オープニング・ナンバーにぴったり!

 A-2「ゲームズ・ピープル・プレイ」はファースト・シングルで、彼らにとって初めてトップ20入りしたヒット曲です(最高16位)。キーボードのアルペジオのイントロはその後もずっとバックで鳴り続けています。Aメロは多重コーラス仕立て。ヴォーカリストの Lenny Zakatek はセカンド・アルバムからずっとこのプロジェクトのスタジオ・ヴォーカリストを務めていますね。印象的なリフからBメロに入り、すぐにサビメロへ。この2パートはとてもフックが強くて、ヒット・ポテンシャルが高いと思います。間奏部のハードな味わいのギター・ソロなど聴いていると、アメリカのロック・バンドみたいですね!

 A-3「時は川の流れに」は美しいバラード・ナンバー。リード・ヴォーカルはエリック・ウルフソン、バック・コーラスがアラン・パーソンズという主役2人が表に出た曲でもあります。エリック・ウルフソンがリード・ヴォーカルを担当したのはこの曲が初なんですよね。メロディの美しさが秀逸で、その美しさをひときわ際立たせるオーケストラ・アレンジが絶妙ですね! 邦題もよく付けたもので、“時間が川のように流れていくさま” を上手く表していると思います。

 この曲はセカンド・シングルとしてカットされ、「ゲームズ・ピープル・プレイ」を1歩追い抜いて、最高15位を記録しました。

 前の曲から神秘的なリフがつなぎ、A面ラストの「アイ・ドント・ウォナ・ゴー・ホーム」が始まります。再びレニー・サカテックをフィーチュアしたアップ・ナンバーで、変わったリズムが多用されている複雑な構造を持っています。エンディングでは再び神秘的なリフが登場し、フェイドアウトで消えていくピアノが不思議な余韻を残します。

 レコードをひっくり返しましょう。A面の最初で聞かれたファンファーレのメロディが、今度は口笛で演じられます。シンコペーションのリズムが楽しげなインスト曲、「黄金のかぶと虫」の始まりです。まず主役に躍り出るのがサックスです。演奏者不詳なのが残念! クライマックスではコーラスが楽器として入ってくる凝りようで、実にユニークな作りだと思います。原題はファースト・アルバム以来のエドガー・アラン・ポーの作品名ですね。

 B-2からラストにかけては組曲になっています。まずはオープニング・テーマに当たる「運命の切り札(パート1)」。アコースティック・ピアノのイントロに木管パートが加わって、実に端麗な美しさを感じます。ハイトーンの美声を聞かせてくれるのは Chris Rainbow。この人の声質は実に優しくて心癒されます。

 B-3「神の使者」はサード・シングルになったアップ・ナンバーで、前曲と同じくクリス・レインボウがリード・ヴォーカルです。原題の “Snake Eyes” というのはサイコロを使ったギャンブルの名前みたいですね。“Seven, Eleven” と歌っているのは決してコンビニの事ではなく、2つのサイコロの目の合計のようです(^^) プログレ風味でけっこう好き♪

 B-4「堅牢の御剣」はチェンバロのイントロで始まるバロック風のインスト曲。6拍子のイントロから、アップテンポになって、5拍子→6拍子→4拍子と猫の目のように拍子を変えつつ、勇ましいメロディを紡ぎ続けます。これはものすごく良い曲ですが、後半が地味なのと演奏時間が3分弱と短いのが玉に瑕(><) もっとたっぷり楽しめたら一押しなのですが(^^;) タイトルは “スペードのエース” のことです。

 B-5「失われ行く神々の国」はバラードから入り、ダイナミックな展開を見せる曲。前半のバラード・パートはエリック・ウルフソンの穏やかなヴォーカルを楽しみましょう。2分35秒あたりからレゲエ風にタッチを変えたかと思うと、ギターが「神の使者」のメロディを一節奏でます。それからハード・ロック顔負けの激しいギター・ソロが続き、最後は切れよく終わります。

 B-6 は組曲の、そしてアルバムの最後を締める「運命の切り札(パート2)」。今度はストリングスが流麗なイントロを奏でます。クリス・レインボウのヴォーカルを一通り聴いたら、次は泣きのギターが主役へ。ラストはオーケストラが前面に出てクライマックスです。たいへんドラマティックなエンディングなので、余韻に浸ったまま、またもう1回聴きたくなるという素晴らしい効果を生んでいますね!

 2008年リリースのリマスターCDには、ボーナス・トラックが7曲ついていました。いずれもアルバム収録曲の別ヴァージョンで、デモ版だったりラフ・ミックスだったりとなかなか貴重な音源ですね。

 彼らが楽曲を仕上げていく “過程” が垣間見え、とても興味をそそられます。

 最後にもう1回書きますが、これは私の “無人島ディスク” の1枚です!

12コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2019.09.14 12:14

    @華大丸せっかくなので、新しいところでゼロからスタートすることにしました。まあ、音楽記事は私のライフワークの一つなので(^^)APPのこのアルバムが気に入っていただけると良いのですが🎵
  • 華大丸

    2019.09.14 11:27

    コメントするのが遅くなってしまいましたが、新規ブログ開設おめでとうございます! 最初の記事が音楽ネタというのはgutch15さんならではですね。 なんか曲名がどれもカッコイイ感じですね。後で検索して聞いてみようと思います。 これからもどうぞよろしくお願いします(*^_^*)
  • gutch15

    2019.09.02 14:05

    @気ままにシンプルでごちゃごちゃしていないところが気に入りました。 オーティス・レディング&カーラ・トーマスの『キング&クイーン』ですね。トランプ・ジャケとしては両方とも有名作になるんでしょうね(^^)

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

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