#0056『Let Love Rule』 Lenny Kravitz


 彼のスタイルを一言で表すと何だろう。

 ドラムスとベースで曲の下地を作り、ギターとキーボードを演奏して流れをモノにし、パーカッションで彩りを添えた上で、ヴォーカルとコーラスを一人で演ってしまうマルチプレイヤー。それがレニー・クラヴィッツでした。

 ニューヨークで生まれ育ったレニー・クラヴィッツは幼少の頃から台所で鍋をドラムスに見立てて叩いていたそうです。聴いて育った音楽は、ご両親の影響を強く受けていて、クラシックからジャズ、ソウルまで相当幅広かったみたいですね。

 『レット・ラヴ・ルール』は1989年にリリースされた彼のデビューアルバムで、「打ち込み無し」にとことんこだわったオールド・スタイルの演奏がいっぱいです。なんだか音楽に忠実な感じがして聴いていてとても気持ちが良い。

 プロデュースはレニー・クラヴィッツ自身で、ミキシングエンジニアは85年からのパートナー Henry Hirsch。若干のキーボード、サックス、ハーモニカ、ストリングスとごく一部のバック・ヴォーカルを除いて、演奏・歌唱はすべてレニー・クラヴィッツだけでまかなっています。


Tr-01 Sittin' On Top Of The World
  02 Let Love Rule (1990 - 全米89位、全英39位)
  03 Freedom Train

  04 My Precious Love

  05 I Build This Garden For Us

  06 Fear

  07 Does Anybody Out There Even Care

  08 Mr. Cab Driver

  09 Rosemary

  10 Be

  11 Blues For Sister Soeone

  12 Empty Hands

  13 Flower Child


 Tr-01 「シッティン・オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」はいきなりミクスチャーってな感じで、アクースティック・ギターでソウルフルな世界を作ります。ヒッピーでサイケなファンク。

 Tr-02はタイトル・トラックの「レット・ラヴ・ルール」。デビューシングルになった曲 でビルボード・ホット100で89位に入りました。エンジニアのヘンリー・ハーシュが弾くキーボードの音などを聞くと60年代後半から70年代前半くらいの曲ではないかと思ってしまうレトロなサウンド。ひときわ目立つサックスは Karl Denson が演奏しています。

 Tr-03 「フリーダム・トレイン」は題名ほどの疾走感はないんですが、踏切をゴトゴト横切っていく各駅停車みたいな鈍重なイメージがあります。リフはまるで Jimi Hendrix が乗り移ったようですね!

 Tr-04 「マイ・プレシャス・ラヴ」にはちょっとビックリ。これはかなりヘヴィなブルーズになっています。ひたすら内側に内側に深~く入り込んでいく感じがします。オルガンと教会スタイルのピアノはまたもやヘンリー・ハーシュの演奏です。

 Tr-05 「アイ・ビルド・ディス・ガーデン・フォー・アス」ではだいぶオープンな雰囲気に変わります。ここではレニー・クラヴィッツがシャウトするスタイルで歌っていて、バックヴォーカリストも何人か使っています。ストリン グスも入ってくるサビの部分は George Martin でも意識したんでしょうか。終盤のギターソロではかなりしっかりとロックしています。

 Tr-06 「フィアー」はかなりファンキーでヘヴィなリズムを取り入れた曲。途中でハードなロックへと展開する部分を迎える構成が鮮やかです。歌詞は当時の奥さんの Lisa Bonet が書いていますね。

 Tr-07 「ダズ・エニバディ・アウト・ゼア・イーヴン・ケア」は失われゆく希望について警告している重い歌詞を持つ曲で、オルガンとフェンダーローズが70年代してますね~!

 Tr-08 「ミスター・キャブ・ドライヴァー」はアップテンポのロックナンバー。シングルになったんですが英米ともチャートには入ってきませんでした。ベースラインなどファンキーなところもあって楽しい曲ですね。タクシー運転手と口論になった経験を元に歌詞を書いたそうですが、ここではその運転手が人種差別者だという設定になってやり玉に上げられています。

 Tr-09 「ローズマリー」はふたたび当時の夫婦での共作曲。アクースティック・ギターの音がじっくりと心に染み入ります。印象的なハーモニカは Lee Jaffe

 Tr-10 「ビー」はかなりブルージーな曲。自身の存在について問いかけた歌詞は聴いている私にも思索の機会を与えてくれます。地味ながらストリングスも入ったアレンジは私の好きなタイプです。

 Tr-11 「ブルーズ・フォー・シスター・サムワン」もミドルスローなナンバー。ここで3曲地味なリズムパターンが続くとちょっとキツイ気もしますね。曲の配列に疑問有り。この曲は60年代風のロックを狙ったのではないかと思います。サックスの音が入ってくる終盤はかなりサイケな音づくりになっていますね。

 Tr-12 「エンプティ・ハンズ」は1曲繰り上げて欲しかった明るいテンポの曲。フラメンコ風のカスタネットに注目です。きっと Phil Spector 狙いに違いない! メロディとヴォーカルはけっこう切ない懐かしい感じが入っていて好きですね~🎵 間奏部で雷のように入ってくるヴァイオリンとチェロにぐいっと心をつかまれます。

 ラストを飾るのは、ここに来て初めてのストレートなロックンロール「フラワー・チャイルド」Electric Light OrchestraJeff Lynne はきっとこういう曲が大好物で、自分でプロデュースしたかったと地団駄を踏んだと思います(^^) アルバムの最後に来てモヤモヤと溜まっていたエネルギーが一気に弾ける感じ、こういう構成は嫌いではありません。




 アルバム全体については、あくまでも個人的には11曲目をカットして全12曲でも良かったような気がします。

 このあとレニー・クラヴィッツは MadonnaVanessa Paradis などに楽曲の提供、プロデュースを行って次第に名を上げていきます。

 ツアーも最初はクラブ回りだったのが、ほどなく Tom Petty & The Heartbreakers の前座をゲット。順風満帆になって自身のヒットへとつなげていきます。





 音楽的なルーツが幅広すぎて、まだ消化し切れていないところもあるのは確かですが、後にグラミー賞『最優秀ロック男性ヴォーカル賞』を受賞した実力の片鱗は、もうこのアルバムに表れているのも事実です。

4コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2020.01.13 13:02

    @気ままに黒いレノンは言い過ぎでしたね(^^;) 「ミスター・キャブ・ドライヴァー」はエッジの利いた良い曲ですよね!
  • 気ままに

    2020.01.13 08:45

    この記事にコメントしようとしたらアメーバの全部ID、パスワード無効にされたのよ、規制が厳しいなあしつこく何回もログイン要求するのはよくないわ。 黒いレノンと呼ばれていたけど、もちろんそこまでじゃなかったけどキャブドライヴァーは名曲ね。
  • gutch15

    2020.01.12 09:10

    @anasatoライヴに行かれたことがあるんですか。それはスゴイ! 全体的に良いアルバムですよね~♪

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

音楽愛好家、井戸探偵、甘味系男子、旅好きなどいろいろな顔を持つ自由人が、思いつくままに気まぐれライフを発信します。