#0055『Richard Marx』 Richard Marx


 USチャートではデビューから大ヒット、一方イギリスでは全然受けなかった。

 最近レコード棚を整理していてピクンと気になって、久しぶりに針を落とした1枚です。

 Richard Noel Marx はイリノイ州出身のロック・シンガー・ソングライター。爽快なアメリカン・ロックを新たな1980年代風エレクトリック・スタイルで届けてくれました。

 彼は82年にロサンゼルスに引っ越して、Lionel Richie の門戸を叩きました。ライオネル・リッチーリチャード・マークスの才能を認め、自分のソロ・アルバムのバック・ヴォーカルに彼を使いました。大ヒットした「You Are/心ときめいて」「All Night Long (All Night)/オール・ナイト・ロング」のバックでリチャード・マークスの声を聞くことができます。またソングライターとしても頭角を現し、Kenny RogersChicago らに曲を提供しています。

 『リチャード・マークス』は87年6月にリリースされた彼のデビューアルバム。シングルカットされた4曲がいずれもビルボード・ホット100でトップ3入りするというド派手なスタートを切ることができ、アルバムも翌88年に最高8位を記録し、米国内だけで300万枚を超える出荷を認定されましたが、反面イギリスではまったくと言っていいほど相手にされませんでした。

 このアルバムは、彼が80年代前半に培った人脈をフルに活かしそうそうたる面々にバックアップされてのレコーディングとなりました。Randy Meisner (vo)、Timothy B. Schmit (vo)、Joe Walsh (g) ら元イーグルたち、Paulinho Da Costa (perc)、Nathan East (b)、John Keane (ds) & Tom Keane (key) 兄弟、Michael Landau (g)、Michael Omartian (p, key) など、他のアーティストのレコーディングでも引く手あまたのミュージシャンたちが参加しています。


Side-A
  1 Should've Known Better/君を知りたい (1987 - 全米3位、全英50位)
  2 Don't Mean Nothing (1987 - 全米3位、全英78位)
  3 Endless Summer Nights (1988 - 全米2位、全英50位)
  4 Lonely Heart
  5 Hold On To The Nights (1988 - 全米1位、全英60位)


Side-B

  1 Have Mercy

  2 Remember Manhattan

  3 The Flame Of Love

  4 Rhythm Of Life

  5 Heaven Only Knows


 アルバムは、コマーシャルな魅力のある「君を知りたい」から始まります。鋭いリズムのクールなロック・ナンバーで、耳を惹かれるキーボードはトム・キーンが演奏しています。バック・ヴォーカルに The Tubes Fee Waybill の名前があるのにも注目。

 「君を知りたい」はセカンド・シングルとなり、87年12月にビルボード・ホット100で最高3位を記録しています。原題の発音は “シュダ・ノウン・ベター” が近いと思います。

 A-2 「ドント・ミーン・ナッシング」はデビュー・シングルに選ばれた曲で、87年8月末にビルボード・ホット100で最高3位を記録。ちょっと南部の香りが漂う泥臭さのあるロック・ナンバーで、私は ZZ Top など思い出してしまいました。

 この曲では元イーグルが大活躍しており、ギター・ソロにはジョー・ウォルシュ、バック・ヴォーカルにはランディ・マイズナー、ティモシー・B・シュミットの名が見えます。

 A-3 「エンドレス・サマー・ナイツ」はマイナー・コードも入るAメロと、ナチュラルなメロディを持つメジャーなサビとの対比が絶妙なミドル・ナンバー。アルバム中で一番ポップな曲かもしれません。イントロからいきなりシンコペーションのドラムスに、Dave "The Rev" Boruff のサックス・ソロが入ってくる構成が素敵。

 この曲はサード・シングルとして88年の春にビルボード・ホット100で2週間2位を記録。「愛しのNO.2ヒット」なんですね(^^)

 A-4 「ロンリー・ハート」はイントロのギターとキーボードのコンビネーションが素晴らしい佳曲。全体の構造はシンプルなんですが音には厚みも感じられます。ギターソロもカッコイイ! 私はこの曲を聴くと Jon Anderson のとある曲を思い出します(^^)

  A面のラストは初のスロー・バラードにして第4弾シングルになった「ホールド・オン・トゥ・ザ・ナイツ」。キーボードとピアノをリチャード・マークス自らが演奏し切なげに歌い上げています。80年代 Chicago のバラードが好きな方はきっと気に入るサウンドでしょう。

 シングルはもちろん大ヒットしました。88年7月にビルボード・ホット100で初のNO.1ヒットを記録。前週の5位から一気に1位へと上がった勢いのあるチャート・アクションでした。

 レコードをひっくり返しB面に入ると、ハードなギターの入る力強いロック・ナンバー「ハヴ・マーシー」が流れます。こういう尖ったナンバーも良い味を出しているし、B面のトップに配置するところなどはなかなかのセンスだと思いますね~。バック・ヴォーカルにはなんと新進気鋭の Karyn White が参加しています!

 B-2 「リメンバー・マンハッタン」ウッディ・アレンの映画『マンハッタン』に関する歌だというのが歌詞から分かります。打ち込みのベースのリフが曲を引っ張ります。吼えるサックスの音色も印象的。作詞は「ロンリー・ハート」に続いてフィー・ウェイビル。彼はバック・ヴォーカルにも参加しています。

 B-3 「ザ・フレーム・オブ・ラヴ」は私にとってはあまり印象が残っていない曲です。スカスカに音が抜けた感じのおとなしい曲。プログラミングされたギターの音のようなリフがやけに目立ちます。

 B-4 「リズム・オブ・ライフ」はマイケル・ランドーのギターのリフと、そのメロディとユニゾンするホーン・セクションがカッコイイ! ホーン・セクションの親玉はもちろん Jerry Hey ですよ~! ゴージャスなバック・コーラスも頼もしいですね。ファンキーなリズム帯が特徴ですが、これがリチャード・マークスの「人生のリズム」

 アルバムのラストは再度バラードで締めとなります。「ヘヴン・オンリー・ノウズ」は80年代のロック・バラードの粋を集めたような曲で、イントロのキーボードは Heart の「Alone」を彷彿とさせるし、メロディラインには Kenny Loggins のような味わいも感じられます。良いとこ取りの極上ナンバーと言えるかもしれませんね。




 4枚のシングルは、すべてビルボード・ホット100に21週間ずつチャート・イン。こんな偶然は珍しいですね。イギリスでもシングル・リリースされましたが、順位は最高でも50位と全く振るわず。アルバムも今一つの成績でした。



 このあとリチャード・マークスのヒット曲はやけにバラードが多くなり、彼のイメージもすっかりアダルト・コンテンポラリー領域のバラード・シンガーとして定着してしまうのですが、このデビュー盤を聴く限り、実はかなりオーソドックスなロック・シンガーなのだと思います。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2020.01.07 22:23

    @anasato意外なきっかけですよね。人生どこにチャンスが転がっているか分からないものです(^^) 田んぼ田んぼって言っている一人かもしれませんよ~(爆)
  • anasato

    2020.01.07 15:34

    なんとデビューのきっかけがライオネル・リッチーだったとは知りませんでした。意外!「All Night Long」で声が聞こえるか試してみましたが分かりませんでした。まさか、田んぼ田んぼのとこ? アルバムは聴いてないですが、Should've Known Betterと、Don't Mean Nothingは好きでした。Don't Mean NothingはイーグルスのLong Runっぽいかなーと思ってました。いい声してますよね。

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