#0050『Jackson Browne/ジャクソン・ブラウン・ファースト』 Jackson Browne


 自らの体験を吐露したたいへん初々しく瑞々しいアルバム。

 ドイツ生まれのLA育ち、オレンジ郡で曲作りを覚えた男 Clyde Jackson Browne。彼の書く歌詞から叙情派の詩人というイメージが確立し、さまざまなアーティストが競って彼の曲をレコーディングしたことからも、評価の高さがうかがえる男。

 なにせ、ジャクソン・ブラウンの曲をレコーディングしたアーティストは、Nico、Nitty Gritty Dirt Band、Johnny Rivers、The Byrds、Joe Cocker  などそうそうたる面々でありまして、自身のデビューのはるか前からソングライターとしての実力を発揮していたわけです。

 1970年には Laura Nyro のオープニング・アクトとして共にツアーをしたりして力を蓄え、Asylum レコードと契約してから72年にリリースしたデビュー・アルバムが『ジャクソン・ブラウン・ファースト』でした。

 作詞作曲はもちろんすべてジャクソン・ブラウン本人。72年のアサイラムは、彼と EaglesJoni Mitchell のプロモーションに力を入れ、三者とも見事にメインストリームに躍り出ました。それどころか、70年代に大ブームとなったウェストコースト・サウンドはここから始まったと言っても過言ではないのです。



Side-A
  1 Jamaica Say You Will
  2 A Child In These Hills/チャイルド・イン・ジーズ・ヒルズ

  3 Song For Adam/アダムに捧げる歌

  4 Doctor My Eyes (1972 - 全米8位)

  5 From Silver Lake/銀色の湖のかけら


Side-B

  1 Something Fine

  2 Under The Falling Sky

  3 Looking Into You

  4 Rock Me On The Water/明日の海へ (1972 - 全米48位)

  5 My Opening Farewell


 記念すべきデビュー盤のA面1曲目は「ジャマイカ・セイ・ユー・ウィル」。穏やかなピアノのイントロで始まるバラードです。ここではロックンローラーと言うよりは正統派シンガー・ソングライターというイメージですね。先述の通りローラ・ニーロの前座を務めたりしていたんですが、彼女や Carole King の男性版といった感じがします。

 A-2 「チャイルド・イン・ジーズ・ヒルズ」Albert Lee のエレクトリック・ギターとジャクソン・ブラウンのアクースティック・ギターが絶妙に絡み合う瑞々しいナンバー。惜しむらくはヴォーカルがちょっと弱く感じられることでしょうか。イーグルズの Glenn Frey あたりが歌っているところを想像すると、また一段とくっきりした印象になりそうです(^^)

 A-3 「アダムに捧げる歌」はアクースティック・ギターでしみじみと歌い上げる曲。バックのヴィオラの音色が印象的ですが、これは David Campbell の演奏です。ところどころで一瞬裏返るヴォーカルが初々しくて、思わず微笑みたくなりますね。これは「ワンルーム・フォーク」といったところでしょうか。

 A-4 「ドクター・マイ・アイズ」は彼のデビュー・シングルとなった曲で、ビルボード・ホット100でいきなりトップ10入りする大ヒットとなりました。曲調は一転、Paul McCartney が書きそうなテンポにブギウギのベースライン。けっこう好き勝手に鳴らしているエレクトリック・ギターは Jesse Davis です。David Crosby のバック・コーラスがとても良い味で、この曲の魅力を倍増させています!

 A面のラストは「銀色の湖のかけら」Craig Doerge のピアノとジャクソン・ブラウンのアクースティック・ギターのアンサンブルに朴訥としたヴォーカルが入ります。途中から加わる掛け合いのヴォーカルは Leah KunkelThe Mamas And The PapasCath Elliot の妹さんですね。このアルバムでドラムスを叩いている当時の夫 Russ Kunkel とつながりで参加したものと思われます。

 B面はシンプルな「サムシング・ファイン」から始まります。アクースティック・ギター一本の弾き語りにデヴィッド・クロスビーのバック・コーラスが加わり、心に染み入るナンバーになっています。このしみじみとした趣はジャクソン・ブラウンの大事な一面ですね。

 B-2 「アンダー・ザ・フォーリング・スカイ」はオルガンが活躍するアップ・ナンバー。後半にひた走るエレクトリック・ギターも聴きものです。ヴォーカルはまだまだ伸びきっていない感じがします。ホント、初々しいんですよね。

 B-3 「ルッキング・イントゥ・ユー」では再びバラードに戻ります。中心となっているピアノは David Jackson、バックでとても印象的に鳴っているペダルスティールは Sneaky Pete Kleinow です。こういうカントリータッチの曲もとてもイイ。

 B-4 「明日の海へ」は清冽な印象を与えてくれるナンバー。クレイグ・ドージが教会で弾いているみたいなピアノを聞かせます。後半に行くにしたがって盛り上がっていくのが楽しいですね~。この曲はセカンド・シングルとしてカットされ、ビルボード・ホット100sw最高48位を記録しました。

 ラストを飾るのは「マイ・オープニング・フェアウェル」。イントロのコード進行に耳を奪われます。全10曲中、私が最も魅了されるメロディを持った曲で、クレイグ・ドージのピアノに合わせてギターを奏でつつ歌うジャクソン・ブラウンに後の大ブレイクの萌芽を感じます。一押し!






 デビュー盤でありながら、シンガー・ソングライターとしての十分なキャリアを感じさせる楽曲が揃っています。サウンドは単調にならないように気を配ったのかいろいろなタイプの曲がありますが、芯には自分のスタイルが貫かれている気がします。

 そして何と言っても歌詞が素晴らしい! 自身の体験に基づく青春の苦悩などが綴られていますが、言葉に説得力があるんですよね~🎵

4コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2020.01.02 16:46

    @anasatoそうなんですよ、マイルドなんですよね。これがソフトロックだと言えばそれまでですが、ヴォーカルにもうちょっと特徴とパワーがあっても良いかなと思います(^^)
  • anasato

    2020.01.02 15:02

    全体的にマイルドで、夏の海の夕暮れが似合うアルバムだと思います!聴き込むほど愛着が沸きますね。
  • gutch15

    2019.12.31 14:24

    @気ままに満を持してのデビューという感じでしたね。ソフトロックの定型といったサウンドで70年代のミュージックシーンの一翼を担いました!

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

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