自らの体験を吐露したたいへん初々しく瑞々しいアルバム。
ドイツ生まれのLA育ち、オレンジ郡で曲作りを覚えた男 Clyde Jackson Browne。彼の書く歌詞から叙情派の詩人というイメージが確立し、さまざまなアーティストが競って彼の曲をレコーディングしたことからも、評価の高さがうかがえる男。
なにせ、ジャクソン・ブラウンの曲をレコーディングしたアーティストは、Nico、Nitty Gritty Dirt Band、Johnny Rivers、The Byrds、Joe Cocker などそうそうたる面々でありまして、自身のデビューのはるか前からソングライターとしての実力を発揮していたわけです。
1970年には Laura Nyro のオープニング・アクトとして共にツアーをしたりして力を蓄え、Asylum レコードと契約してから72年にリリースしたデビュー・アルバムが『ジャクソン・ブラウン・ファースト』でした。
作詞作曲はもちろんすべてジャクソン・ブラウン本人。72年のアサイラムは、彼と Eagles と Joni Mitchell のプロモーションに力を入れ、三者とも見事にメインストリームに躍り出ました。それどころか、70年代に大ブームとなったウェストコースト・サウンドはここから始まったと言っても過言ではないのです。
Side-A
1 Jamaica Say You Will
2 A Child In These Hills/チャイルド・イン・ジーズ・ヒルズ3 Song For Adam/アダムに捧げる歌
4 Doctor My Eyes (1972 - 全米8位)
5 From Silver Lake/銀色の湖のかけら
Side-B
1 Something Fine
2 Under The Falling Sky
3 Looking Into You
4 Rock Me On The Water/明日の海へ (1972 - 全米48位)
5 My Opening Farewell
記念すべきデビュー盤のA面1曲目は「ジャマイカ・セイ・ユー・ウィル」。穏やかなピアノのイントロで始まるバラードです。ここではロックンローラーと言うよりは正統派シンガー・ソングライターというイメージですね。先述の通りローラ・ニーロの前座を務めたりしていたんですが、彼女や Carole King の男性版といった感じがします。
A-2 「チャイルド・イン・ジーズ・ヒルズ」は Albert Lee のエレクトリック・ギターとジャクソン・ブラウンのアクースティック・ギターが絶妙に絡み合う瑞々しいナンバー。惜しむらくはヴォーカルがちょっと弱く感じられることでしょうか。イーグルズの Glenn Frey あたりが歌っているところを想像すると、また一段とくっきりした印象になりそうです(^^)
A-3 「アダムに捧げる歌」はアクースティック・ギターでしみじみと歌い上げる曲。バックのヴィオラの音色が印象的ですが、これは David Campbell の演奏です。ところどころで一瞬裏返るヴォーカルが初々しくて、思わず微笑みたくなりますね。これは「ワンルーム・フォーク」といったところでしょうか。
A-4 「ドクター・マイ・アイズ」は彼のデビュー・シングルとなった曲で、ビルボード・ホット100でいきなりトップ10入りする大ヒットとなりました。曲調は一転、Paul McCartney が書きそうなテンポにブギウギのベースライン。けっこう好き勝手に鳴らしているエレクトリック・ギターは Jesse Davis です。David Crosby のバック・コーラスがとても良い味で、この曲の魅力を倍増させています!
A面のラストは「銀色の湖のかけら」。Craig Doerge のピアノとジャクソン・ブラウンのアクースティック・ギターのアンサンブルに朴訥としたヴォーカルが入ります。途中から加わる掛け合いのヴォーカルは Leah Kunkel。The Mamas And The Papas の Cath Elliot の妹さんですね。このアルバムでドラムスを叩いている当時の夫 Russ Kunkel とつながりで参加したものと思われます。
B面はシンプルな「サムシング・ファイン」から始まります。アクースティック・ギター一本の弾き語りにデヴィッド・クロスビーのバック・コーラスが加わり、心に染み入るナンバーになっています。このしみじみとした趣はジャクソン・ブラウンの大事な一面ですね。
B-2 「アンダー・ザ・フォーリング・スカイ」はオルガンが活躍するアップ・ナンバー。後半にひた走るエレクトリック・ギターも聴きものです。ヴォーカルはまだまだ伸びきっていない感じがします。ホント、初々しいんですよね。
B-3 「ルッキング・イントゥ・ユー」では再びバラードに戻ります。中心となっているピアノは David Jackson、バックでとても印象的に鳴っているペダルスティールは Sneaky Pete Kleinow です。こういうカントリータッチの曲もとてもイイ。
B-4 「明日の海へ」は清冽な印象を与えてくれるナンバー。クレイグ・ドージが教会で弾いているみたいなピアノを聞かせます。後半に行くにしたがって盛り上がっていくのが楽しいですね~。この曲はセカンド・シングルとしてカットされ、ビルボード・ホット100sw最高48位を記録しました。
ラストを飾るのは「マイ・オープニング・フェアウェル」。イントロのコード進行に耳を奪われます。全10曲中、私が最も魅了されるメロディを持った曲で、クレイグ・ドージのピアノに合わせてギターを奏でつつ歌うジャクソン・ブラウンに後の大ブレイクの萌芽を感じます。一押し!
4コメント
2020.01.02 16:46
2020.01.02 15:02
2019.12.31 14:24