#0041『Christopher Cross/南から来た男』 Christopher Cross


 デビュー当時は「シンガー・ソング・プロレスラー」と呼ばれていた。

 1979年12月27日に「謎の覆面ミュージシャン」のデビュー・アルバムがリリースされました。

 デビュー時は、アルバム・ジャケットの中央を占める「ピンク・フラミンゴ」のトレードマーク以外、詳細は一切不明。レコードに針を落とした時に聞こえてくる美しいハイトーン・ヴォイスから「どんなルックスなんだろう?」と誰もが興味津々だったものでした。

 さて、冒頭のキャッチコピー「シンガー・ソング・プロレスラー」の紹介とともに、彼のルックスが明らかになった時には、どういうわけか(^^;)音楽ファンの彼のルックスに対するコメントはなりを潜め、代わりにその素晴らしい楽曲にばかり話題が集まり始めました・・・・

 クリストファー・クロスこと Christopher Charles Geppert はテキサス州生まれのシンガー・ソングライターです。70年代の大部分を地元のバンドで過ごした彼がワーナーと契約したのは78年のことでした。

 Michael Omartian のプロデュースにより制作され、彼の人脈による多くの有名ミュージシャンが参加した『南から来た男』は、4曲の全米トップ20ヒットが生まれたこともあっていきなり売れに売れました。94年の夏までに全米だけで★★★★★500万枚の出荷を認定されたほか、世界各地で大人気となりましたね。

 このアルバムは1980年度のグラミー賞で「Album Of The Year/最優秀アルバム賞」を受賞。とにかく完成度の高いアルバムで、私は1枚全部聴き通すことがとても多い作品です。


Side-A
  1 Say You'll Be Mine (1981 - 全米20位)
  2 I Really Don't Know Anymore/愛はまぼろし

  3 Spinning
  4 Never Be the Same/もう二度と (1980 - 全米15位)
  5 Poor Shirley/哀れなシャーリー


Side-B
  1 Ride Like the Wind/風立ちぬ (1980 - 全米2位、全英69位)

  2 The Light Is On/ライト・イズ・オン

  3 Sailing (1980 - 全米1位、全英48位)

  4 Minstrel Gigolo/ジゴロの芸人


 オープニングの「セイ・ユール・ビー・マイン」は冒頭にふさわしい明るいポップなナンバー。3分に満たない小品ですが、アルバムの持つソフト・ロックの雰囲気をつかむには十分です。Jay Graydon のギター・ソロと Nicolette Larson のほとんどデュエット状態のコーラスが素晴らしい。

 この曲は全米では4枚目のシングルとしてカットされ、ビルボード・ホット100で最高20位を記録しました。

 A-2 「愛はまぼろし」は緊迫感のあるイントロ~Aメロと伸びやかなサビメロで構成されるアップ・ナンバー。ここでは Larry Carlton のギター・ソロと Michael McDonald のデュエット・コーラスが印象的。当時の感想としては、すごいミュージシャンが新人を手伝っているなと驚嘆!

 A-3 「スピニング」は沈着なAメロとメロディアスなサビとの対比が楽しめる曲。全体的にジャジーな雰囲気だと思うんですよね。演奏では Victor Feldman のヴァイブラフォンと Chuck Findley のトランペット・ソロが耳に残ります。

 最初のAメロの声がクリストファー・クロスではない! しかも女性だ! 今度のゲスト・ヴォーカリストはなんと Valerie Carter なんですよね~。すごい贅沢だな(^^)

 A-4 「もう二度と」はキラキラするイントロが聞こえたとたんに「あぁ、アダルト・コンテンポラリーだ」と思いました。こういうキーボードの使い方はとても好きですね~。その後ろのアクースティック・ピアノはプロデューサーのマイケル・オマーティアンが弾いています。間奏部のやけに丹念なギター・ソロはふたたびジェイ・グレイドンです。

 全米ではサード・シングルとしてカットされ、ビルボード・ホット100では最高15位、アダルト・コンテンポラリーでは見事にNO.1 !

A-5 「哀れなシャーリー」はストリングス・セクションも交えたバラード。イントロ抜きでストリングスとヴォーカルのAメロから始まり、バンドのビートが入るBメロ→サビメロへと展開してからこのパターンが繰り返されます。かなり哀愁のあるメロディに、けなげにも強さを見せようとする女性についての歌詞を乗せていますね。

 レコードをひっくり返すと大ヒットしたデビュー・シングルの「風立ちぬ」が流れ始めます。風のSEから緊張感が押し寄せるイントロでつかみはOK。小気味よいテンポとシンプルながら印象的なピアノのリフ。この曲を聴いてクリストファー・クロスのソングライターとしての才能は間違いないと思いました。

 タイトルは「風のようにバイクで疾走する」という意味でしょう。闇夜にフルスピードでメキシコへとひた走るライダー。無法の限りを尽くした挙句、裁きから逃れようと急ぐ一人の男の姿が浮かびます。またこの曲には「Dedicated To Lowell George」というサブタイトルが付されており、79年に亡くなったミュージシャンに捧げたものだということが分かります。

 「風立ちぬ」は全米チャートで大ヒットしました。ビルボード・ホット100では4週連続で2位を走っていたんですよね。そのとき上に立ちはだかったのは、Blondie の「Call Me」でした。

 B-2 「ライト・イズ・オン」「もう二度と」と同系統のアダルト・コンテンポラリー・サウンドですね。イントロの軽やかなリフは聴いていると心がとても楽になってきます。このリフだけつなげて延々と聴いていたいな(^^;)

 今度はバック・コーラスに Don HenleyJ.D. Souther の名が。つくづくすごいね! ラリー・カールトンの2曲目のギター・ソロも聴きどころです。

 B-3 「セイリング」はドリーミーなバラード・ナンバー。アメリカ人のイメージする「航海」はこういったゆったりとしたサウンドで表現されるんですね。ストリングス・セクションのアレンジが秀逸なのと入れ替わりに主役になるキーボードのリフも控え目ながらたいへん印象的。マイケル・オマーティアンのピアノ・ソロも素敵です。

 「セイリング」はセカンド・シングルとしてカットされ、ビルボード・ホット100で見事にNO.1に輝いて、「風立ちぬ」の悔しさを晴らしました。この曲が大ヒットしたことにより彼は一発屋にならずに済んだのだと思います。そう考えると、シングル・カットを決めた担当者の大ファインプレイですね!

 ラストを締めるのはアルバム中で最も長い「ジゴロの芸人」。ミディアムテンポのビートにアクースティック・ピアノとアクースティック・ギターの絡みが乗って行くのが最高! バック・ヴォーカルにはプロデューサーのマイケル・オマーティアンも参加していたり、Eric Johnson がエレキ・ギターのソロを担当していたり、Tomás Ramírez の美しいサックス・ソロなどもあって聴きどころ満載です。





 まあ間違いのない作品ですから、とにかくまずは聴いてみてください🎵

6コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2019.12.15 23:25

    @sgtbeatlesデビュー・アルバムにしてこの完成度に驚かされましたね。私も「風立ちぬ」が大好きですね~♪
  • sgtbeatles

    2019.12.15 23:01

    このアルバムは素晴らしい出来でしたね。このアルバムでは「Ride Like the Wind」が一番好きなんですよ。(^^
  • gutch15

    2019.12.03 21:25

    @anasato本人も自虐的にレスラーと言っていたらしいので本物です(何が? ^^) 「風立ちぬ」は神降臨の名作ですね♪

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

音楽愛好家、井戸探偵、甘味系男子、旅好きなどいろいろな顔を持つ自由人が、思いつくままに気まぐれライフを発信します。