アコースティック・ポップな作品集。
1968年の後半にロンドンのデッカ・レコードのスタジオに5人のミュージシャンが入りました。
そのメンバーとは以下の5人。
- Tony Banks (organ, p, vo)
- Peter Gabriel (vo, fl)
- Anthony Phillips (g, vo)
- Michael Rutherford (b, vo)
- John Silver (ds, vo)
これがジェネシスの始まりでした。この段階では自分たちが70年代を代表するワールドワイドな知名度と人気を誇るプログレッシヴ・ロック・バンドになるとは夢にも思わずに、必死に初めてのアルバム作りに励んでいたことでしょう。
そして完成したのが『From Genesis To Revelation/創世記』でした。当初はイギリスでも売れず、USではリリースもされなかったアルバムですが、70年代に入ってから後発のレコードが徐々に売れ始めたのをきっかけに、ようやくリリースの運びとなった経緯があります。
USでは73年リリースの『Selling England By The Pound/月影の騎士』(1974 - 全米70位 ●ゴールド・ディスク) が売れた段階で『From Genesis To Revelation/創世記』 がリリースされ、ビルボードのアルバム・チャートで最高170位という地味な成績を残しました。
私が持っているレコードは、さらにその後、77年に London レコードから再リリースされたUS盤LPで、タイトルは『In The Beginning』となっています。内容は69年リリースのオリジナル版とまったく同じとなっています。
「天地創造」をテーマに据えたコンセプト作品となっていますが、サウンド面では割りとどこにでもあるようなアコースティック・ポップで、まだまだ個性も十分には発揮できていません。もったいぶった白人中流社会を思わせるオーケストレーションを伴うサウンドが、せっかくの意欲的な歌詞をつぶしてしまっているという面も無くはない。
それでも、どことなく当時人気だった The Moody Blues との類似点も感じられるし、The Beatles の『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』に影響を受けたような曲と曲がクロスフェイドするところがあったり、Bee Gees のようなちょっとサイケな感じもあったりして興味深いのです。偉大なバンド、ジェネシスのファースト・アルバムとしてチェックしておく必要はあると思います。
Side-A
1 Where The Sour Turns To Sweet/人生に歓びを
2 In The Beginning/天地創造3 Fireside Song/煩炉端の歌物語
4 The Serpent/エデンの蛇
5 Am I Very Wrong/そんなに僕は間違っているかい
6 In The Wilderness/荒地にて
Side-B
1 The Conqueror/孤独な征服者
2 In Hiding/隠遁生活
3 One Day/いつの日か僕は・・・
4 Window/心の窓
5 In Limbo/天と地の間
6 Silent Sun/静寂な太陽
7 A Place To Call My Own/安息の地
ストラットをより単純化したような冒頭部がユニークな「人生に歓びを」で幕開けです。ピーター・ゲイブリエルのヴォーカルは、後のアクの強さに比べたらほんのハミング程度に思えてきますね~(^^) まだまだ主張し切れていないところが明らかです。ストリングスやホーン・セクションを駆使したアレンジはムーディ・ブルーズへの憧れかな。
A-2 「天地創造」は電気的に処理した音から入り、入れ替わりでマイク・ラザフォードのベースラインが登場してくる入り口部分が一風変わっています。でもメロディに入ってしまうと通常のポップな曲なんですね。当時はアメリカにもジェネシスという同名バンドがあって、60年代に『In The Beginning』というアルバムを出していたりして、とてもややこしかったのだそうです。
A-3 「煩炉端の歌物語」は厳かな聖歌のようなピアノのイントロから入ります。このイントロが実に素晴らしくリスナーとしては期待が高まってしまうのですが、結果的に50秒続くこのピアノのパートが一番の聴きどころになってしまうのはちょっと寂しいかな。イントロに見合った後の展開が欲しいところですね。
A-4 「エデンの蛇」は陰のあるイントロのフレーズが印象的です。ところが「パコパコ」いっているパーカッションが、いかにも不器用なのが残念。40秒ぐらいから本編が始まりますが、こちらはいかにも60年代のサイケなポップ・ロックという感じ。ベースとギターでユニゾンしているリフはけっこうカッコイイです!
A-5 「そんなに僕は間違っているかい」は厳かなイントロから入るバラード。ピアノとアコースティック・ギターが一体となって真摯な雰囲気を高めます。ヴォーカルとともに右チャンネルに入ってくるフルートが寂しげで良いですね。サビメロでコーラスになりますが、よく言えば素朴、欲を言えばもう一工夫!
A面ラストの「荒地にて」はトニー・バンクスのピアノのイントロから。これも素朴だな~。ピーター・ゲイブリエルは演劇人の素養がある彼らしく、Aメロではミュージカルのような抑揚のある歌いっぷりを見せたかと思うと、サビメロでは爽やかな感じに転じたりしてなかなか面白いです。エンディングにはピアノのコーダがついていますが、シンプルすぎて古くささは否めません。
レコードをひっくり返すと聞こえてくるのは「孤独な征服者」の思わせぶりなイントロです。重々しいイントロに比べて本編は軽やかなアコースティック・ポップ。タンブリンなどを使ったパーカッション・パートも楽しげで、5人の一体感が伝わってくる曲ですね。後半では珍しくエレクトリック・ギターのソロが聞けたりするのも◎!
B-2 「隠遁生活」はワルツのリズムが特徴のミドル・ナンバー。ドラムス抜きでアコースティック・ギターがリズム帯を務め、そこに流麗なストリングス・セクションが加わって、清涼感を与えてくれます。パンク少年たちがこの曲を聴いて、ジェネシスの世界に目覚めてしまったという伝説もあるそうですよ!
B-3 「いつの日か僕は・・・」はアコースティック・ギターのフェイドインから始まり、ストリングスが加わり、ピアノのアルペジオ、ヴォーカル、ホーンと徐々に厚みを増していく曲。全体の印象が爽やかでなかなか美しい曲だと思いますね~。でもこのタイプの曲は後のジェネシスではまったく見られないんじゃないかな。そういう点では貴重な存在かもしれません。
B-4 「心の窓」はどこかオルゴールのような遊び心のあるイントロから奥行きのあるホーンへと移るイントロが素晴らしいと思います。Aメロから寂しげなヴォーカルが聞こえてくると素朴な雰囲気に変わってしまうのが惜しい!
B-5 「天と地の間」はアコースティックな導入部から入りやがてポップに転じるアップ・ナンバー。途中のコーラスワークは The 5th Dimension っぽいところもあったりして時代を感じさせます。ヴァースのつなぎ目と終盤でワルツになっていくところなどはなかなか凝った作りで、このあたりは70年代の作品を予感させます。
B-6 「静寂な太陽」はトニー・バンクスのシンプルなピアノのイントロから始まります。なんだかビージーズっぽいんですが、それは偶然ではなく、プロデューサーの Jonathan King がビージーズを気に入っているのを知って、敢えて寄せて行ったというのが真相のようです。そのおかげかこの小品はシングルになりましたが、残念ながらヒットはしませんでした。
ラストを締める「安息の地」は厳粛なイメージのピアノをバックにピーター・ゲイブリエルが歌う本編の後に、アルバム全体のコーダとも言うべきオーケストレーションとハミング・コーラスのパートがついた作品。フェイドアウトして2分で終わってしまうのが素っ気ない感じがしますね。70年代だったらこのテーマで7分ぐらいの曲が作れたんじゃないかな~。ということで、今さらながら、この曲から70年代のジェネシスの発展を期待したりするわけです(^^)
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2019.11.07 22:38
2019.11.07 21:49