20世紀の終末期にデビューしたヤヴァ面白い連中のモンスター・アルバム。
リンキン・パークは変幻自在のオルタナ・ロック・バンドです。1996年にカリフォルニアで結成された時には違うバンド名だったようですが、下積み時代を経てメジャー・レーベルのワーナーとの契約に漕ぎつけ、リンキン・パークという名前でデビューが決定しました。
『ハイブリッド・セオリー』は2000年10月リリースの彼らのメジャー・デビュー作。この段階でのメンバーは、
- Chester Bennington (vo)
- Rob Bourdon (ds)
- Brad Delson (g, b)
- Joseph Hahn (Records, Sampling)
- Mike Shinoda (MC, vo, Sampling)
の5人で、このうちロブ・バードン、ブラッド・デルソン、マイク・シノダの3人は高校の同級生なのだそうです。
90年代あたりから台頭し始めたオルタナ・ロックは様々なジャンルと融合しながら進化し、ファンクとメタルを結合してからラップを加えるなど、それまでの多種多様な音楽のミクスチャーとなりました。その産物はまさに「Hybrid = 混血児」。このアルバムのタイトルが彼らの音楽を象徴しているように思えます。
Tr-01 Papercut (2001 - 全英14位)
02 One Step Closer (2000 - 全米75位、全英24位)
03 With You
04 Points Of Authority
05 Crawling (2001 - 全米79位、全英16位)
06 Runaway
07 By Myself
08 In The End (2002 - 全米2位 ●ゴールド・ディスク、全英8位)
09 A Place For My Head
10 Forgotten
11 Cure For The Itch
12 Pushing Me Away
13 My December14 High Voltage
打ち込みのビートからハードなサウンドに展開する1曲目は「ペイパーカット」。彼らの攻撃的な姿勢がよく出たサウンドですが、歌詞は極度の不安について歌っています。ヴォーカルのパートとラップのパートがミックスされていて、リンキン・パークらしさが十分に表現されている曲だと思います。3枚目のシングルとなって、イギリスでは14位を記録。
Tr-02 「ワン・ステップ・クローサー」はファースト・シングルになったナンバーで、よりヘヴィさを強調した作りになっていますね。イントロから聞かれるギターのリフが曲を引っ張っています。キレる寸前ギリギリまで達したイライラ感をぶつけるような内容は、作った時のメンバーの心境そのものなのだとか。
Tr-03 「ウィズ・ユー」はビートに The Dust Brothers が参加している曲。ヒップホップとメタルの融合もこうして難なく実現してしまうあたり、やはりただ者ではないですね。ラップも効果的です。
Tr-04 「ポインツ・オブ・オーソリティ」はシンプルなリフが引っ張るパートと、フックが強いシャウトのパートから成る曲。ブラッド・デルソンが作ったリフをマイク・シノダがバラバラにしてからコンピュータで再構成したそうで、ラストではサンプリング処理しています。
Tr-05 「クローリング」はセカンド・シングルになった曲で、出だしのノイジーなパートと不意に大人しくなるパートの組み合わせで出来ています。児童虐待に関する歌詞は、チェスター・ベニントンの実体験に基づくものだとか。PVでもアザのある少女が出てますね。
Tr-06 「ラナウェイ」はヘヴィ・メタルらしいパワフルな曲。途中でヴォーカルと掛け合い状態でラップがかぶさってくるところが彼ららしいところですが、ラップは控えめだな。「ワン・ステップ・クローサー」で描かれているイライラ感は、この曲のレコーディングに対するものなのだそうです。
Tr-07 「バイ・マイセルフ」はテクノっぽさが際立つパートとメタルなパートが鋭い対比になっているナンバー。チェスター・ベニントンのシャウトはちょっと狂気じみていて、実際にライヴで見たら怖いかも・・・・。
Tr-08 「イン・ジ・エンド」は珍しくピアノのイントロで始まる曲。そのフレーズがリフになっていて、アルバム中でもっともマイルドな出来ですね。全体にヴォーカルよりもラップの方が主役になっていて、マイク・シノダの活躍が目立ちます。2001年10月に4枚目のシングルとしてカットされ、ついに全米トップ40入りを果たし、そのままぐいぐいと上昇して翌02年3月30日付のビルボード・ホット100で最高2位を記録。大ブレイクとなりました。08年8月には●ゴールド・ディスクにも認定された大人気曲です。
Tr-09 「ア・プレイス・フォー・マイ・ヘッド」はマイナー時代からレパートリーに入っていた曲に新しく歌詞をつけたもので、静かなギターのイントロからパワフルなラップ・メタルに発展します。ベースに Ian Hornbeck がゲスト参加していますね。
Tr-10 「フォガットゥン」もマイナー時代の曲で、スラッシュ・メタルっぽい入り方からグルーヴ感のあるラップに移り、またメタルに戻っていくアクティヴな作り。こういう曲が彼らの原点である「メタルとラップの混血」なんでしょうね~。
Tr-11 「キュア・フォー・ジ・イッチ」はしゃべりから入るインスト曲で、ドラムスとスクラッチ、それにシンセ・ストリングスを組み合わせたもの。マイク・シノダの独り舞台というつくりで、遊び心が感じられる反面、唐突な感じも否めない。
Tr-12 「プッシング・ミー・アウェイ」は懐かしさを感じるハード・ロック・ナンバー。ギターのリフとしっかりとしたメロディラインの構成は80年代のロック・バンドを聴いているようですが、そこにラップが入ってくるのが新境地ですね。オリジナル・アルバムではラストを飾っていますが、原点という意味では最後を飾るのに相応しいのかもしれません。
私の持っている日本盤CDには2曲のボーナス・トラックがついています。Tr-13 「マイ・ディセンバー」と Tr-14 「ハイ・ヴォルテージ」はともにシングル「ワン・ステップ・クローサー」のカップリング曲(B面曲)です。
「マイ・ディセンバー」はメロウなピアノをバックに情感豊かに歌うバラード。けっこう単調ですが、ここまでメロウな曲は珍しいですね。
「ハイ・ヴォルテージ」はラップ全開のヒップホップ・ナンバー。リミックスもあるようですが、そちらはあまり聴いたことがありません。
4コメント
2019.11.05 14:00
2019.11.05 13:21
2019.11.05 04:40