Mike Chapman が肩入れした女性ロッカー。
ブルックリン出身の女性シンガー Patricia Mae Andrzejewski は、1972年、彼女が18歳の時に一度結婚して苗字が Benatar になりましたが、79年に離婚してしまいました。プライヴァシーについてはよく知りませんが、ひょっとして離婚のきっかけは、彼女のメジャー・デビューとなったこの『真夜中の恋人達』!?
ということで、今朝はパット・ベネターのデビュー・アルバムを聴いてみましょう。
Peter Coleman が7曲、マイク・チャップマンが3曲プロデュースしたこのアルバムは、ヴァラエティに富んだ選曲が楽しいロック・アルバムです。79年にリリースされビルボードのアルバムチャートにデビューするとそのまま122週間(!)居座り、最高第12位を記録、★ミリオン・セラーになっています。
パット・ベネターのヴォーカルのバックバンドを務めるのは、Roger Capps (b)、Neil Giraldo (g, key)、Glen Alexander Hamilton (ds)、Scott St. Clair Sheets (g) の4人。バンドのメンバーの中で一番光っているのは、もちろん後に彼女の再婚相手となるニール・ジェラルドですよね。彼はリード・ギターにスライド・ギター、キーボードにバック・ヴォーカルと大活躍です。
パット・ベネターの曲の切れ味のあるサウンドの源はニール・ジェラルドだと言って良いでしょう。
Tr-01 Heartbreaker (1980 - 全米23位)
02 I Need A Lover
03 If You Think You Know How To Love Me/明日の恋
04 In The Heat Of The Night/真夜中の恋人達
05 My Clone Sleeps Alone
06 We Live For Love/愛にまかせて (1980 - 全米27位)
07 Rated X/レイティッド・X08 Don't Let It Show/何も見たくない
09 No You Don't
10 So Sincere/いつわらぬ心
トップを飾る「ハートブレイカー」は彼女にとって初めてチャートインしたシングル曲です。サウンドにあまり厚みはないんですが、彼女の圧倒的なヴォーカル・パワーがそれをみごとに補っています。若い頃にオペラ唱法のレッスンを受けていたというだけあって、時に聞かせる、のどからではなく腹の底から出る声が見えない壁となって迫ってきます。
私にはちょっと演出過剰気味に感じられるアレンジや彼女のセクシーなコスチュームも人気となって、このシングルは売れました。79年12月下旬にビルボード・ホット100に入り、そのまま翌80年にトップ30入りしました。
Tr-02 「アイ・ニード・ア・ラヴァー」は John Cougar Mellencamp のカヴァーです。3コードの基本的なロックンロールがシンプルで心地よい。「グリースのテーマ?」いやいや違う曲ですよ(^^;)
実はこれが彼女のデビュー・シングルなんです。ラジオでは少しかかった時期もあったようですが、残念ながらチャートインせずに終わりました。
Tr-03 「明日の恋」は彼女のセカンド・シングルでありながら、これまたチャートインしなかった曲です。ちょっと重めのミドル・ビートに、爆発する手前くらいのエネルギーを秘めたパット・ベネターのヴォーカルが乗ります。ニール・ジェラルドのギター・ソロの疾走感もカッコイイですね。
Tr-04 「真夜中の恋人達」はシンコペーションの効いたベースラインが特徴的ですね。2曲目からこの曲までがマイク・チャップマンの担当で、少し遠くにミックスされているギターのきしるような音が真夜中の雰囲気です。原題は「夜の盛りに」といった意味ですが、あのコスチュームを着たパット・ベネターと真夜中に出会ってしまったらどうしよう!?(^^)
Tr-05 「マイ・クローン・スリープス・アローン」は美しいピアノのイントロに導かれるバラードから入ります。このように優しく歌うパット・ベネターはまた新たな魅力を見せてくれるし、のちにヒットした「We Belong」のような曲を予感させます。
さて、この曲は途中でガラリと雰囲気を変えテンポアップ。この手法は「Promises In The Dark/見つめ合う夜」でも使われていましたね。最後はかなりにぎやかに盛り上がって終わります。
Tr-06 「愛にまかせて」は2発目のシングル・ヒットになったロック・ナンバー。この曲で人気女性ロッカーの座を射止めたのではないでしょうか。「ハートブレイカー」でふと気に留めて、「愛にまかせて」で虜になるというパターンを私も踏んでしまいました。
これはこのアルバム中唯一ニール・ジェラルドが書いた曲です。地声からオペラティックな高音まで、パット・ベネターのヴォーカルの魅力を余すところなく伝える曲に仕上がっています。もうすでにぞっこんだったんだろうな(^.^)
Tr-07 「レイティッド・X」はあっと驚く Nick Gilder のカヴァーです。「愛にまかせて」の次のシングルとしてリリースされたのですが、空振りでした。これはちょっとニューウェイヴ的な音作りだと思いますよ。パット・ベネターのヴォーカルはなんだかとても可愛らしい。このアルバムを聴いていて面白いところは、こういった多様性でしょうね。
Tr-08 「何も見たくない」はほとんど注目されていない曲なのですが、私が愛して止まない The Alan Parsons Project のカヴァーなのです。あちこちのレビューでジョン・クーガーとニック・ギルダーのカヴァーのことは書いてあるんですが、我がアラン・パーソンズのことはほとんど目にしたことがありません。だからこの場で多めに書きます(^o^)
このカヴァーはほぼ原曲に忠実ですね。Dave Townsend が歌っていた通りにパット・ベネターがなぞっているようです。ただし、原曲はプログレのバンドらしく後半でテンポが変わってインストになるんですが、こちらはストレートなロック・バラードとしてそのまま終わっています。
Tr-09 「ノー・ユー・ドント」はハードなギターのリフから入る曲。曲作りはマイク・チャップマンですが、プロデュースはピーター・コールマンなんです。ここでのパット・ベネターはかなりシャウトしてますね。迫力満点です。
ラストを締める「いつわらぬ心」は彼女のコケティッシュな魅力を前面に押し出したポップな曲。ちょっとユーモラスなヴォーカル部分と、ニール・ジェラルドのギター・ソロが聞ける激しい間奏部分との対比が面白い。最後にこんなに遊び心あふれる曲が入っているのもうれしいではありませんか!
6コメント
2019.11.02 13:27
2019.11.02 09:14
2019.11.01 23:14