#0027『Whole Oats』 Daryl Hall & John Oates


 満点ではないけれど、輝く曲も入っている。

 ダリル・ホール&ジョン・オーツのデビュー・アルバム『ホール・オーツ』は、Arif Mardin のプロデュースで1972年にリリースされました。ダリル・ホールはヴォーカルの他にキーボードとマンドリン、ジョン・オーツはヴォーカルとギターを担当。バックバンドは Mike McCarthy (b)、Jim Helmer (ds, perc) のみのシンプルな編成で、曲によってはストリングスやホーンなどが入ってくるアレンジになります。

 『ホール・オーツ』は平凡なソフト・ロック・アルバムで、まだまだソウルフルな感じも出し切っていないし、かといって極上のポップにもなり切っていない発展途上の感が否めません。めざましいシングル・ヒットも出なければ、アルバムもまったく売れませんでした。

 それでも中には“キラ~リ★✨”と輝く楽曲が入っているのです。売れる前の作品からそういった後につながる楽曲を拾い上げていくのも、大切な音楽リスニング生活であろうと思っている私です(^^)


Tr-01 I'm Sorry
  02 All Our Love
  03 Georgie

  04 Fall In Philadelphia

  05 Waterwheel

  06 Lazyman

  07 Goodnight And Goodmorning

  08 They Needed Each Other

  09 Southeast City Window

  10 Thank You For...

  11 Lilly (Are You Happy)/リリー


 アルバムの始まりは、まずまずポップな「アイム・ソーリー」から。ドラムスにパーカッションが加わった軽やかなリズムがイイですね。Aメロの5~8小節めのラインが一番強いフックになっています。Bメロで変化を見せますが、魅力はAメロの方が上ですね~。ファルセットのコーラスワークが聞かれるパートは工夫したんだな。その後左チャンネルから聞こえるジョン・オーツの野太いヴォーカルが印象的です。

 Tr-02 「オール・アワ・ラヴ」は軽やかなサウンドにつぶやくようなヴォーカル。ヴォーカルと併走するような左チャンネルのエレクトリック・ギターがアクセントになっています。バック・ヴォーカルが左チャンネルに入り込んでいるのが面白いな。リードがジョン・オーツに変わるパートでも、ダリル・ホールが左チャンネルに入ってますからね。

 Tr-03 「ジョージー」は単調なバラードで始まって、1分過ぎにちょっと力強く変化、1分半過ぎからまた曲調が変わるドラマのような曲です。アリフ・マーディンのインパクトのあるプロダクションが光っています。

 Tr-04 「フォール・イン・フィラデルフィア」は1つ目のキラリ★✨。ミュージカルの1曲のような出だしからドラムスとファンキーなギターが入ってインテンポ、ピアノやヴァイブラフォンが華やかな印象を与えます。フックが強いサビメロ部分ではホール&オーツ以外にもコーラスが加わっていますね! この曲あたりは後の「ポップンソウル」につながる大事な基礎部分なんですね。

 Tr-05 「ウォーターウィール」はピアノ・バラード。Aメロでいきなりファルセットに上がっていくところがとても印象深いです。ファースト・コーラスはピアノの弾き語り、セカンド・コーラスからストリングスや木管も入って、いっそう美しさが増します。中盤のギターとピアノのアンサンブルも雰囲気が良く、バラードとしてなかなかの聴きものです。

 Tr-06 「レイジーマン」もバラードです。ピアノから入ってメロディ最初の “♪ Lazyma~~n” のところはなかなかのフックですが、曲全体としてはまさしく Lazy な感じ。ドラマティックに盛り上げていこうとするアレンジは分かりますが、ちょいと空回りしてるかな~。

 Tr-07 「グッドナイト・アンド・グッドモーニング」はイントロからして輝いていますね~。2つ目のキラリ★✨間違い無し! マンドリンが聴き手の心まで震わせるんですよ! バックのストリングスも美しくて、全体に壮大な仕上がりです。ホール&オーツが好きなら、この曲はぜひ聴くべし。

 Tr-08 「ゼイ・ニーディッド・イーチ・アザー」はキーボードとアコースティク・ギターを中心に据えたバラード。フェンダー・ローズの響きは嫌いではありませんが、正直言って4分間が長く感じられます。

 Tr-09 「サウスイースト・シティ・ウィンドウ」はジョン・オーツ作のフォーク・ソングという感じです。最初のリード・ヴォーカルはジョン・オーツが担当していて、ダリル・ホールのファルセット・コーラスが重なってきます。ペダル・スティールが入ってきますが、これは Bill Keith の演奏。工夫は分かるが今一つ開花していないんじゃないかな。

 Tr-10 「サンキュー・フォー・・・・」もジョン・オーツの作品。アコースティック・ギターと穏やかな木管に彩られたフォーク・バラードです。私の受ける印象としては、「色がない」感じ(伝わるかな?)。もっとディープに行くのか、もっとゴージャスに行くのか、はっきりしない感じがして平凡に思えてしまいます。

 Tr-11 「リリー」はイントロのピアノで心を鷲づかみにされます! 文句なしの3つ目のキラリ★✨。スロウ・バラードではありませんが、なんとも切ない甘酸っぱいメロディですよ~🎵 ストリングスの入ったアレンジも秀逸で、「これぞホール&オーツの真骨頂!」といったロックとソウルの融合も大いに感じられます! 一押し♪♪






 このアルバムのレコーディングが良い経験になったのでしょう。アリフ・マーディンとの共同作業もより一層充実し、彼らの次のアルバムはものすごくクォリティが上がりました。

 『ホール・オーツ』 は後の大成功の基礎を固めるための敷石みたいな存在なのかな(^^)

4コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2019.10.20 12:12

    @anasatoやっぱりキラリと光る曲がありますよね! 「アイム・ソーリー」もA面のトップだけあってフックが強いですね(^^)
  • anasato

    2019.10.20 08:47

    「Fall In Philadelphia」は名曲だと思います!「Goodnight And Goodmorning」もいいですね。次の「アバンダンド・ランチョネット」に入っててもおかしくない。「I'm Sorry」のソウル・フィーリングも好きだなー。
  • gutch15

    2019.10.20 00:07

    @Mermanキラリは3曲とも既に大器の予感がしますね。全盛期のヒット曲はぜひ聴いてみていただきたいです♪

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

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