なんて贅沢なバック・バンドだろうか。
1968年末の The Animals の解散後にすっかり鳴りを潜めていたエリック・バードンが、強力なファンク・バンドを従えて第一線に復帰したのがこの『宣戦布告』というアルバムでした。
バック・バンドのウォーというのは、もちろん 70年代に大活躍した“あの” ウォーですよ! それではここでこのアルバムのパーソネルを確認しておきましょう。
- Eric Burdon (lead vo)
- Dee Allen (perc, congas)
- Harold Brown (ds)
- Bee Bee Dickerson (b, vo)
- Lonnie Jordan (p, organ)
- Charles Miller (sax, flute)
- Lee Oskar (harmonica)
- Howard Scott (g, vo)
アルバム全体が組曲のような形式でまとめられていますが、ライヴにも強いバンドをバックに従えていることもあって、ここでの楽曲にはジャム感覚のアレンジを垣間見ることができます。
Tr-01 The Vision Of Rassan
a) Dedication/献呈辞
b) Roll On Kirk02 Tobacco Road
a) Tobacco Road
b) I Have A Dream/夢
c) Tobacco Road
03 Spill The Wine (1970 - 全米3位 ★ミリオン・セラー)
04 Blues For Memphis Slim
a) Birth/誕生
b) Mother Earth/母なる大地
c) Mr. Charlie
d) Danish Pastry/デンマークの練り菓子
e) Mother Earth/母なる大地
05 You're No Stranger
Tr-01 「ザ・ヴィジョン・オブ・ラサン」は、教会スタイルの大仰なピアノから入ってそのままゴスペル・タッチで進んでいきます。エリック・バードンのヴォーカルは淡々そして朴訥としています。「お前ら、じっくりと味わえ!」といったところでしょうか。
やがてホーン・セクションも加わってソウルフルな響きになっていきますが、そのパートは「ロール・オン・カーク」と名づけられています。木管のジャズ奏者 Roland Kirk に捧げているのだそうです。
Tr-02 「タバコ・ロード」は、John D. Loudermilk の曲で、64年には The Nashville Teens のヴァージョンがビルボード・ホット100で最高14位を記録しています。その他にも多くのミュージシャンを刺激し、カヴァーされていますね。
ベースとタンバリンを中心に延々と続いていくリフに、エリック・バードンの乾いたヴォーカルが響きます。このアルバム・ヴァージョンはなんと14分を超える大作で、同じテンポのビートに乗せて、疾走感のあるパートからじっくりとその場で足踏みをするようなパートまでを表現しています。
Tr-03 「スピル・ザ・ワイン」はシングル・カットされてビルボード・ホット100で最高第3位、★ミリオン・セラーを記録した大ヒット曲です。ラテン色の感じられるミドル・ナンバーで、エリック・バードンが歌うバックでは女性がスペイン語でしゃべっています。
ある日、ウォリー・ハイダー・スタジオでキーボードのロニー・ジョーダンがワインの大瓶を倒してしまったことがきっかけで、「じゃあこのことを歌にしてしまおう!」という話になったのだとか。
Tr-04 「ブルース・フォー・メンフィス・スリム」は13分超の大作。組曲形式の中心は「母なる大地」というブルーズ・パートです。エリック・バードンは沸騰直前のバックトラックに乗せて、人の誕生から有限の命までを歌います。
途中、チャールズ・ミラーのサックス・ソロと、リー・オスカーのハーモニカ・ソロのパートが入り、それぞれ「ミスター・チャーリー」と「デンマークの練り菓子」と名づけられています。
「メンフィス・スリム」というのは、エリック・バードンがパリで知り合ったブルーズ・ピアニストの名前だそうです。
ラストを締めるのは後年のウォーのサウンドを予感させる「ユア・ノー・ストレンジャー」です。どこかで聞いたメロディに歌詞をつけてみたものの、そのメロディが誰のものだったか分からなくなってしまったという曰く付きの曲で、一度はアルバムから削除された時期もありました。
2分に満たない短い曲ですが、ウォー単体が持つ独特のグルーヴ感を見て取るには十分です!
4コメント
2019.10.18 15:09
2019.10.18 02:59
2019.10.17 23:13