#0024『Earth, Wind & Fire/アース、ウィンド&ファイア・デビュー』 Earth, Wind & Fire


 ワーナー時代はまだ黎明期だった。

 アース、ウィンド&ファイアは、1970年代から活躍しているR&B/ファンク系ヴォーカル&インストゥルメンタル・グループです。グループの発足をまとめておくと・・・・

 メンフィス出身の Maurice White はシカゴでセッション・ドラマーとしてプロ・ミュージシャンになり、ブルーズやジャズの演奏に加わっていました。その後66年から3年間 Ramsey Lewis のバンドのドラマーとして活躍してから、69年に The Salty Peppers を結成します。このバンドがアース、ウィンド&ファイアと名前を変え、メジャー・デビューしたのがワーナーから。

 今朝は71年2月リリースのデビュー・アルバム、『アース、ウィンド&ファイア・デビュー』を聴いています。

 このアルバム時点のメンバーは、モーリス・ホワイト (vo, ds, perc) と Wade Flemons (p, vo)、Don Whitehead (p, vo) を中心に、モーリスの弟 Verdine White (b)、さらにホーン・セクションなどを加えた総勢10名の大所帯。プロデューザーは後の The J. Geis Band の『Sanctuary/サンクチュアリ(禁猟区)』などで知られる Joseph Wissert でした。 

 全7曲30分弱と、フル・アルバムながら短い収録時間です。「R&Bとロック、ジャズを一体化させよう」というモーリス・ホワイトの試みがどれだけ成功しているかが、評価の鍵となりそうです。


Tr-01 Help Somebody
  02 Moment Of Truth/真実の瞬間
  03 Love Is Life (1971 - 全米93位)
  04 Fan The Fire
  05 C'Mon Children
  06 This World Today/今日の世界
  07 Bad Tune

 ちょっとジャジーな出だしで始まる「ヘルプ・サムバディ」で幕開けです。ファンキーなリズムにラテン・パーカッションとホーン・セクションが乗って、ソウルフルなコーラスも聞かせてくれます。メロディはさほど強くないかな。でも期待を高める雰囲気はあって、A面のトップに置くには良い曲だと思います。

 曲と曲とのつなぎにスキットが入りますが、これはずっと後のヒップ・ホップにも受け継がれている手法ですね。だからといって、さほど面白みがあるとは思えないのが残念なところ。

 Tr-02 「真実の瞬間」はホーンのイントロから入ってから、ベースとリズムがリフになって展開していくアップ・ナンバー。ホーンとコーラスを活用していますが、もっと綿密なアレンジがあってもいいかもしれません。ブリッジのユニークなベースラインはなかなかの聴きどころです。

 Tr-03 「ラヴ・イズ・ライフ」は初となるメロウ・グルーヴ。この曲も雰囲気がとても良いです。女性ヴォーカルも聞こえてきますが、これは Sherry Scott で、彼らにしては珍しい女性メンバーということになります。どこかで聴いた感じがすると思ったら、Sly & The Family Stone のメロウ・チューンとよく似た空気感ですね。この曲はシングル・カットされ、ビルボード・ホット100で最高93位を記録しています。

 Tr-04 「ファン・ザ・ファイア」はファンク色が強いアップ・ナンバー。イントロでは Michael Beal のエレクトリック・ギターをフィーチュアしていて、ヘヴィなアレンジとなっています。一気に目が覚めるナンバーとなっているはずだったのでしょうが、ヴォーカル・ラインの力強さが足りず中途半端になってしまった感が否めません。中盤から終盤にかけての盛り上がりはかなり良くて、ヴォーカル&インストゥルメンタル・グループとしての面目躍如といったところです。

 Tr-05 「カモン・チルドレン」はファンク・ロックに仕上げたリズム・ナンバー。こちらは War のサウンドを思い起こさせますね! そのあたりは、オリジナリティが足りないという批評にもつながってしまうかな。冗長にせず、3分強とコンパクトにまとめたのは◎!

 Tr-06 「今日の世界」はソフト&メロウ・チューン。ベースラインなどはやはりスライ&ザ・ファミリー・ストーンで聴いたような雰囲気です。ヴォーカルはユニゾンやコーラスが中心で、物足りなさが残ります。ホーン・セクションのパートなどをもっと緻密に組み立てれば、かなり印象的な曲になったかも。

 ラストを締めるのはインスト曲の「バッド・チューン」。雷鳴のSEからモーリス・ホワイトのカリンバの演奏は緊張感があって好きです。ファンキーなベースラインとキレの良いホーン・セクション、そしてそこに絡みついてくるカリンバの演奏は、アルバム中ピカ一のクォリティ! 途中でリズムがエキゾティックに変化したりして強弱をつけているのも上手いアレンジです。楽器演奏者としてのモーリス・ホワイトの力量が発揮された素晴らしいファンク&ロールに仕上がっていますね。一押し♪





 アルバム全体のクォリティはまだまだで、本文中に書いたようにスライ&ザ・ファミリー・ストーンやウォーの中途半端なコピーと思えるような曲があるのは事実です。そんな中、メロウ・チューンにもファンクにもそれなりの聴きどころがあるのもまた事実だと思います。

 というわけで、まったく無視するわけにはいかない1枚といったところでしょうか(^^)

4コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2019.10.18 15:11

    @気ままにモーリス・ホワイトもまだプロデューサーの意向には勝てず、後に特長となるホーン・セクションなども平凡ですけどね(^^) その映画は私も気になります。何だろう?
  • 気ままに

    2019.10.18 02:52

    俺なんかは完成されたアースの音よりこういう粗削りな方がイイですね。 そういえば310数年前にタイトル忘れたけどこういうグルーヴのバンドばかり出る映画がリバイバル上映していて話題になっていたんです。メチャ観たくなってきた。
  • gutch15

    2019.10.15 23:11

    @anasatoプロデューサーの影響もあってブラック・ロック的になったんでしょうね。まだやりたいことがはっきりとしていない感じが初々しいんですね!

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