ロックンローラー&パフォーマーの始祖。
粘っこいロックンロール・ヴォーカルとド派手なパフォーマンスで1950年代から活躍していた彼がどれくらい偉大なのかというと、ピアノを叩きまくった上に脚まで乗っけて演奏するスタイル、聴き手を挑発し大人しくさせないスタイル、顔に派手な化粧を施して舞台に上がるスタイルなど、すべては「リトル・リチャードのオリジナル」なのです!
『ヒアズ・リトル・リチャード』は彼が Specialty レーベルから57年にリリースした最初のアルバムで、同レーベルに移籍した55年からレコーディングしてシングル・ヒットさせた曲を中心に収録した作品です。
ピアノを弾いてシャウトしまくるのはもちろんリトル・リチャード本人。バック・バンドでは Lee Allen (tenor sax)、Edgar Blanchard (g)、Frank Fields (b)、Earl Palmer (ds)、Alvin "Red" Tyler (baritone sax) らが演奏しています。また、一部の曲では別のミュージシャンが演奏していたりもします。
Tr-01 Tutti Frutti (1956 - 全米17位、全英29位)
02 True Fine Mama
03 Can't Believe You Wanna Leave
04 Ready Teddy (1956 - 全米44位)
05 Baby
06 Slippin' And Slidin' (1956 - 全米33位)
07 Long Tall Sally/のっぽのサリー (1956 - 全米6位 ★ミリオン・セラー、全英3位)
08 Miss Ann/いとしのアン (1957 - 全米56位)
09 Oh Why?10 Rip It Up (1956 - 全米17位、全英30位)
11 Jenny Jenny (1957 - 全米10位、全英11位)
12 She's Got It (1956 - 全英15位)
オープニングを飾るのは、歴代のロックンロール・ヴォーカルの中でも最高のパフォーマンスではないかと思われる「トゥッティ・フルッティ」。ビルボード・トップ100(※ ホット100になる前の当時のチャート名)で最高17位を記録したロックンロール黎明期の誉れ高いヒット曲で、Bill Haley & His Comets の「Rock Around The Clock」と並んで、ロックンロールという名のスタイルを音楽史の上に載せた曲です。
Tr-02 「トゥルー・ファイン・ママ」はピアノ・パフォーマンスもきらりと光るブギ・ロックンロール。この曲と Tr-12 はバック・ミュージシャンが上記とは別の人たちなんです。何だか華やかだと思ったら、バック・コーラスがついていました。
Tr-03 「キャント・ビリーヴ・ユー・ウォナ・リーヴ」はブルージーなナンバー。快速ロックンロールの中にあって、バランスをとるための存在と言えるでしょう。アルバムを単にシングルの寄せ集めにしないこの流れ、この時代の他のアーティストにも見習ってほしかったところですね。リトル・リチャードは、もちろんR&Bという下地があるので、こういう曲も情感たっぷりに歌い切りますね。
Tr-04 「レディ・テディ」は Tr-10 と同時に作者の Johnny Marascalco が持ち込んだロックンロール・ナンバー。シングルB面でありながらヒットして、ビルボード・トップ100で最高44位を記録しています。『エド・サリヴァン・ショウ』で Elvis Presley が歌ったこともあり、以来ロックンロールのスタンダード・ナンバーとなっています。
Tr-05 「ベイビー」は、快速ロッカーが支配する中に配された、比較的スローな小品。Tr-03 とともにアルバムのバランスをとっていますが、こちらの方がよりいっそう軽やかな感じがします。間奏部のサックス・ソロが存在感を示していますね。
Tr-06 「スリッピン・アンド・スライディン」はピアノのイントロが小気味よいナンバー。元々は Al Collins が55年にレコーディングした「I Got The Blues For You」という曲で、その翌年に歌詞を改めてリトル・リチャードがレコーディングしました。
Tr-07 「のっぽのサリー」は「トゥッティ・フルッティ」と並ぶ稀代のロックンロール・ヴォーカル・パフォーマンス。全米チャートでは最もヒットした曲で、ビルボード・トップ100で最高第6位まで上がり★ミリオン・セラーに輝いています。後に The Kinks がデビュー・シングルに選んだり、The Beatles がカヴァーしたことでも知られていますね。
Tr-08 「いとしのアン」は3曲目のスロー・ナンバー。Tr-11 とのカップリングでシングル・リリースされました。全米では「ジェニー・ジェニー」がA面でしたが、日本盤7"シングルは「いとしのアン」がA面扱いでした。
Tr-09 「オー・ホワイ」もブルージーなスロー系。ちょっと地味な雰囲気なのも、リトル・リチャードのヴォーカルがひときわ脂ぎって聞こえるのも、叩きつけるようなピアノが入っていないからでしょうか。
Tr-10 「リップ・イット・アップ」は Specialty レーベルの第3弾シングルに選ばれたタイトなロックンロール。「のっぽのサリー」を聴いたジョニー・マラスカルコが、自分の書いたこの曲をプロデューサーの Bumps Blackwell のところに持ち込んできたもので、彼はこの曲がリトル・リチャードのために生まれたものだと直観したのだそうです。
Tr-11 「ジェニー・ジェニー」は強烈なブギ・ロックンロール。女性に愛を伝えるシンプルな歌詞を迫力たっぷりのシャウトで歌い切る、リトル・リチャードが最も躍動的かつエキサイティングになっている瞬間かもしれません。全米トップ10入りしたこの曲は、彼のライヴでの定番曲になりました。
ラストを締める「シーズ・ガット・イット」もナイス・ロックンロール。ひときわ疾走感のあるビートと迫力のあるサックス・パートに彩られています。特に終盤のヴォーカル&サックス、ピアノ&サックスの絡みがすさまじいエネルギーを放っていて、派手やかにアルバムの幕を閉じます。
4コメント
2019.10.10 14:32
2019.10.10 14:18
2019.10.10 01:50