#0007『Mr. Wonderful』 Fleetwood Mac


ブルーズ時代のセカンド・アルバム。

縦に伸ばしてみましょう! 背が大きいですね~(笑) 2メートルありますから!

 フリートウッド・マックは60年代にブリティッシュ・ブルーズ・バンドとして結成されました。その後数々のメンバー変更を経て、英米混成のポップ・ロック・バンドへと進化発展していったのはご存知の通りです。

 今夜はそんな彼らのセカンド・アルバム、ブルーズ満載の『ミスター・ワンダフル』をアップします。

 まずはこの時点でのメンバー4人をご紹介。結成時のままのオリジナル・クワルテットですね。

  • Peter Green (vo, g)
  • Jeremy Spencer (vo, g, p)
  • John McVie (b)
  • Mick Fleetwood (ds)

 バンド名はリズム帯担当の2人からつけられていますが、リーダーシップを取っていたのはピーター・グリーンでした。数曲のカヴァー以外のオリジナル曲は彼とジェレミー・スペンサーの作であり、ジョンとミックは積極的な関与を見せていないのが分かります。

 ゲスト・ミュージシャンには、Christine Perfect (p)、Steve Gregory (sax)、Johnny Almond (sax)、David Howard (sax)、Ronald Vaughan (sax)、Duster Bennett (harmonica) らの名前が見えます。

 クリスティン・パーフェクトは後に正式メンバーになるクリスティン・マクヴィーのことで、もうこの時点で参加していたんですね。

 フリートウッド・マックはアメリカのブルーズ・バンドと比べると、泥臭さが少なく洗練度が高い気がします。その違いがどこから来ているのかは定かでありませんが、実はグループ名になった2人が作り出すリズム帯なのかもしれません。粘っこさよりもキレが感じられるのは私だけでしょうか!?

 『ミスター・ワンダフル』のオリジナルLPは12曲収録。のちにリマスターCDが出た時にはボーナス・トラックが付けられていました。


Side-A
  1 Stop Messin' Round/モタモタするな
  2 Coming Home
  3 Rollin' Man
  4 Dust My Broom
  5 Love That Burns/燃える恋
  6 Doctor Brown


Side-B

  1 Need Your Love Tonight

  2 If You Be My Baby

  3 Evenin' Boogie/夕暮ブギー

  4 Lazy Poker Blues

  5 I've Lost My Baby/君をなくして

  6 Trying So Hard To Forget


CD Bonus Tracks

  1 Stop Messin' Round (Take 1,2,4)/モタモタするな

  2 Stop Messin' Round (Single)/モタモタするな

  3 I Held My Baby Last Night

  4 Mystery Boogie


 A-1 「モタモタするな」は、典型的な3コード進行を見せる曲。ピアノの3連打の繰り返しがブルーズ特有のリズムを刻みます。ヴォーカルと張り合うように入ってくるサックスのアンサンブルがなかなか都会的な空気を運んできますね。

 A-2 「カミング・ホーム」は、Elmore James の57年の曲のカヴァー。シカゴ・ブルーズのスタイルですね。ここではのっけからパワフルなギターが3連打を担当。フリートウッド・マックにはこのパターンで始まる曲がけっこうあるのです。

 A-3 「ローリン・マン」は、ロックンロールのリズム。Elvis Presley の曲だと言っても通用しそうなノリですね。

 A-4 「ダスト・マイ・ブルーム」はこれまたエルモア・ジェイムズの55年の曲のカヴァー。イントロはやはりギターによる3連打の繰り返し。もうこのパターンはお約束です。

 A-5 「燃える恋」は泣きのスロー・ブルーズ。ピーター・グリーンの演奏するギターのフレーズが心に染み入ります。とにかく泣かせます! ギターと同じようにリフを演じるサックスの味も良いですよ。

 A-6 「ドクター・ブラウン」Buster Brown の曲。やはりシカゴ・ブルーズのスタイルです。したがって、イントロはギターによる3連打のリピートです。ここまで来るとこのフレーズを聴いただけではどの曲なのか分からなくなってきますが、逆にシカゴ・ブルーズを演るときはこのパターンで始まるのだと割り切ってしまえるようになります!

 B-1 「ニード・ユア・ラヴ・トゥナイト」はジェレミー・スペンサーの曲。ところがイントロはシカゴ・スタイルで、「ドクター・ブラウン」がもう一度流れてしまったのかと確認したくなります(笑)。しかし、3連打が念入りに繰り返されているので、違う曲だと分かります。

 ここで気づくのは、シカゴ・ブルーズに傾倒していたのはピーターよりもむしろジェレミーだったのだということ。彼のギター・プレイも素晴らしいですね~。

 B-2 「イフ・ユー・ビー・マイ・ベイビー」は、珍しく粘り着くようなスローなブルーズ・ナンバー。ここでピアノを叩いているのはクリスティン・パーフェクトなんです。ピーターのギターを歪ませているのも粘っこい効果を生んでいますね。

 B-3 「夕暮ブギー」は、ロカビリー調の快速ブギウギ・インストゥルメンタル・ナンバー。メインをギター、サックスで交代して担当しているので目先が変わって飽きませんね。この曲で一気にテンションが上がり、徐々に溜まってきていたエネルギーが爆発する感じがします。

 B-4 「レイジー・ポーカー・ブルーズ」は3連打の真ん中を飛ばしたシンコペーションのリズムが印象的なアップ・ナンバー。アルバムの中でも一番と言えるほど鮮やかなイメージを持った曲だと思います。ブリティッシュ・ブルーズ・バンドにしかできない曲。

 B-5 「君をなくして」は、けだるいスロー・ブルーズ。これはアメリカ南部のブルーズ・スタイルですね。このアルバムの中では一番最初にレコーディングされた曲のようで、ジェレミーのギターの素晴らしさとヴォーカルがたっぷりと楽しめるナンバーとなっています。

 B-6 「トライング・ソー・ハード・トゥ・フォゲット」は、ギターとハーモニカだけによる演奏にヴォーカルが乗る作品。ピーターとダスター・ベネットだけでレコーディングしていますね。アルバムの最後を寂寥感で締めるナンバーとなっています。



 99年リリースのコンプリート・ボックス・セットのCDには、ボーナス・トラックが収録されていました。またその後単体でリリースされたCDにも同じボーナス・トラックが収録されています。

 ①、②は「モタモタするな」の別テイク。①は録り直しを含むレコーディング風景がうかがえるテイク、②はシングル・ヴァージョンですね。

 ③ 「アイ・ヘルド・マイ・ベイビー・ラスト・ナイト」は、またまたエルモア・ジェイムズのカヴァーで、ずっしりと重いブルーズ。ここではピーターがベースを弾いていて、ジョンが参加していない模様です。

 ④ 「ミステリー・ブギー」は、軽いタッチのブギウギ・ナンバー。ウォーミング・アップくらいの演奏に感じられます。

 私はこの時期のブルーズ・マックも、後のポップ・ロック・マックも好きなのです。60年代のマックにはスタジオ・アルバムの他に、あちこちでレコーディングされたライヴ音源が山ほどあって、すべて追いかけるのはとてもたいへんです。

 せめてスタジオで録音された曲たちだけでも、しっかりと追跡しておきたいですね。



 この『ミスター・ワンダフル』は、ピーター、ジェレミーの2人のギタリストがそれぞれしっかりと主張した、存在感のあるアルバムとなっています。

 しかし、一番印象的なのは、ジャケットに写る身長2メートルに及ぼうかというミック・フリートウッドだったりして!(^^;)

8コメント

  • 1000 / 1000

  • gutch15

    2019.09.16 15:07

    @気ままにホワイト・ブルーズ・ギタリストのイングランド代表がピーター・グリーンではないでしょうか。バンド命のもとになった2人を後ろで上手く使って、フリートウッド・マックを大成功させた立役者ですね(^^)
  • 気ままに

    2019.09.16 15:03

    ピーター・グリーンこそ真のホワイトブルーズギタリストで他は紛い物である!!と言っても過言じゃないくらいイイね。
  • gutch15

    2019.09.16 14:01

    @sgtbeatles私はほぼアナログで持っているのが自慢です(^^;) ブルーズ時代のマックもとても良いので、捨てがたいです!

自由人 Gutch15 の気まぐれライフ from 横浜

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